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シリア暫定政権とクルドSDF、統合含む停戦で合意、課題も

今回の合意は軍事衝突の回避を目指すものであり、両者の戦力を再編成しつつ中央政府の統治体制に統合する枠組みを定めている。
クルド人主導の民兵組織シリア民主軍(SDF)の兵士(Getty Images)

シリア暫定政権とクルド人自治区の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は30日、段階的な軍・行政統合を盛り込んだ包括的な停戦合意に達したと発表した。米国の仲介により成立したこの合意は、シリア国内の長年の対立を収束させる一歩として評価され、米国特使は「歴史的な節目」と称賛した。

今回の合意は軍事衝突の回避を目指すものであり、両者の戦力を再編成しつつ中央政府の統治体制に統合する枠組みを定めている。具体的には、前線に展開していた政府軍とSDF部隊が戦線から撤退し、治安維持を目的として内務省の治安部隊がハサカやカミシュリなど北東部の主要都市に展開する計画が盛り込まれた。これらの都市はこれまでSDFが実効支配してきた地域で、国軍の進出は象徴的な意味を持つ。

また、合意にはSDFの戦闘部隊を国軍に組み込むための新部隊設立が含まれている。これには3つのSDF旅団を基盤とする新たな軍師団の形成や、コバニを拠点とする別の旅団をアレッポ所属として位置付ける計画が含まれる。これにより、SDF戦力は政府軍の一部として正式に統合される方向に進む。

行政面では、クルド主導の自治体機構や地方行政機関を国の体制に統合する手続きも盛り込まれた。これにより、これまで北東シリアで独自の統治を行ってきたSDF主導の行政機構が、シリア国家の制度に組み込まれる見込みとなる。ただし、二重共同指導制や一部自治的要素の維持については調整が続くとみられる。

合意は昨年3月に一度成立した統合案の実施が進まなかったことを受けて改めて交渉が行われたもので、政府軍が北東部の広範な地域を掌握し、SDF勢力を包囲する中での妥結となった。SDFは内戦中に領土の4分の1以上を支配し、イスラム国(ISIS)に対する戦いで国際的な支援を受けたが、情勢は変化しつつある。

米国のバラック(Tom Barrack)シリア担当特使はX(旧ツイッター)への投稿で、「この合意は国家再統合、和解、持続的安定への歴史的な節目だ」と評価し、包摂と相互尊重、市民の尊厳を反映した進展だと述べた。フランスも合意への支持を表明している。

一方で、合意の履行には多くの課題が残るとの見方もある。特に北東部の最前線での停戦が完全に維持されるか、SDFの全戦闘員が統合プロセスに従うかは不透明であり、国境検問所や重要インフラの統制など一部の核心的な問題は未解決のまま残された。政府側はすべての国境検問所を国家統制下に置く意向を示しているが、SDF側からは明確な回答が出ていない。

この合意は地域の安定化と国の再建に向けた重要な一歩として歓迎される一方で、停戦と統合プロセスが長期的に持続するかどうかについては国際社会や専門家の間で慎重な見方も根強い。合意の実施状況は今後のシリア情勢に大きな影響を与えるとの見方が強まっている。

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