◎アサド大統領がアラブ諸国を訪問するには2011年のシリア内戦開始以来初。
シリアのアサド大統領は18日、UAE(アラブ首長国連邦)の首長であるムハンマド副大統領兼首相と会談し、両国の関係改善と経済、投資、商業レベルでの協力を広げることなどについて協議した。
アサド大統領がアラブ諸国を訪問するには2011年のシリア内戦開始以来初。
シリアの国営通信SANAによると、アサド大統領はアブダビのムハンマド皇太子とも会談したという。
アサド大統領は内戦勃発後、22カ国からなるアラブ連盟を追放され、西側と近隣諸国から徹底的に叩かれた。内戦の犠牲者は数十万人に達し、人口の半分が国外避難民になり、国の大部分は破壊され、復興には数千億ドルかかると見積もられている。
SANAは、「アサド大統領とムハンマド副大統領兼首相は両国の関係全般と経済、投資、商業レベルでの2国間協力の輪を広げることなどについて協議した」と報じている。
UAEの通信社WAMは、「両首脳はシリアの領土保全や外国軍の撤退など、共通の関心事について議論した」と報じた。
今回の訪問はアラブ諸国が中東の問題児であるアサド大統領と再び関係を持とうとしていることを示している。
レバノンやヨルダンはアサド大統領との関係を復活させており、貿易を充実させるために米国に対シリア制裁を緩和するよう働きかけている。
アラブ諸国と西側諸国は内戦に発展した2011年の抗議デモ(アラブの春)に対する致命的な弾圧でアサド大統領を非難し、内戦初期には反対派を支援した。内戦当事者は戦争犯罪や人道に対する罪で訴えられている。
しかし、内戦が行き詰まり、ロシアとイランの軍事支援でアサド政権が国土の大部分の支配を確立すると、多くのアラブ諸国がアサド大統領との関係改善に動いた。
アラブ諸国の盟主サウジアラビアとUAEはシリア内戦の混乱下で急速に勢力を拡大した宿敵イランとシリアの関係を切ることに注力している。
イランはアサド政権に数十億ドルの援助を行い、イランのジハード兵をシリア軍に派遣し一緒に戦わせた。
ロシアはアサド政権に多くの兵器を提供し、シリア軍の生物化学兵器使用を黙認した。またロシアの民間軍事会社ワグナー・グループは内戦で大活躍した。
UAEは2018年末にシリア大使館を再開し、アサド政権に歩み寄る姿勢を示したが、関係は冷え込んだままだった。昨年秋、UAE外相はアサド大統領との会談のためにダマスカスを訪問した。米国はこの訪問を批判し、アサド政権との関係を正常化すべきではないと述べた。
しかし、和解は両国にとって有益である。
シリアの復興は欧米の厳しい経済制裁で思うように進まず、石油資源の豊富なUAEとの関係改善は急務である。UAEは国内や同盟国で働いているシリア難民に故郷に戻ってほしいと考えている。