◎シリア内戦の犠牲者は50~60万人と推定され、10万人以上が行方不明になったとみられる。
アラブ連盟(Arab League)は7日、大量虐殺で告発されているアサド(Bashar al-Assad)大統領の支配下に置かれるシリアの連盟復帰を承認した。
アラブ諸国は内戦で荒廃したシリアとの関係見直しを進めている。
シリアの連盟復帰は今月末にサウジで予定されている首脳会談に先立つものである。復帰により、アサド氏も会談に出席する可能性が出てきた。
米国とイギリスはシリアの復帰を批判している。
米国務省の報道官はSNSに声明を投稿。「シリアは復帰に値しないが、米国はシリアの危機を解決するという連盟の長期目標を支持する」とツイートした。
英国防省は「連盟とアサド政権の関与に引き続き反対する」と表明。アサド氏は無実のシリア人を拘束・拷問・虐殺している非難した。
シリア外務省は声明で、連盟の決定を歓迎した。
エジプトの首都カイロで開催された会合には加盟22カ国の内13カ国の外相が出席した。
連盟はシリア内戦とそれに起因する難民・麻薬危機を終わらせる必要性を強調した。
シリア内戦に関与した多くの戦闘員や民間人がフェンタニルを含む様々な麻薬に手を染めている。
連盟はこの問題解決に向けた取り組みを主導する新たな委員会を発足させる予定だ。
連盟は声明の中で、「この決定はシリアの危機を解決するプロセスの始まりであり、それは徐々に進められていくだろう」と述べている。
また連盟は「復帰はアラブ諸国とシリアの関係改善を意味するものではなく、それは各国政府が決めることだ」と強調した。
国連によると、シリア内戦の犠牲者は50~60万人と推定され、10万人以上が行方不明になったとみられる。
戦前の人口2100万人のうち、およそ半数がシリア国内または海外に難民として逃亡した。
北西部のクルド系反政府勢力が支配する地域で生活するシリア難民はアラブ連盟の決定にショックを受けている。
AFP通信の取材に応じた男性は、「アラブの指導者たちは難民キャンプで苦しんでいる何百万人もの市民を救う代わりに、虐殺者と手を組もうとしている」と語った。「アラブと手を組んだアサドは次に何をしますか?」
アサド氏は2015年、ロシア軍の支援を受け、イスラム国(ISIS)に支配された領土を回復し始めたが、アラブ諸国はアサド氏が支配するシリアとの関係を見直さざるを得なくなった。
しかし、今年2月に発生したトルコ・シリア地震後、多くのアラブ諸国がシリアとの関係見直しを加速させた。
イランのライシ(Ebrahim Raisi)大統領は今週初めにシリアを訪問し、アサド氏と会談した。一部の専門家は「連盟はシリアとイランの関係深化を恐れ、シリアの復帰を急いだ」と指摘している。