シリア、26年1月1日から通貨交換開始、中央銀行総裁が発表
これは独裁政権時代の紙幣を新しい通貨と交換する措置であり、長期にわたる内戦と制裁で価値が極端に下落したシリア・ポンドの信頼回復と安定化を図る狙いがある。
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シリア中央銀行のフスリエ(Abdelkader Husrieh)総裁は25日、来年1月1日から通貨交換を開始すると発表した。これは独裁政権時代の紙幣を新しい通貨と交換する措置であり、長期にわたる内戦と制裁で価値が極端に下落したシリア・ポンドの信頼回復と安定化を図る狙いがある。
通貨交換は暫定政権の経済再建計画の一環として実施される。同国ではアサド(Bashar Assad)前大統領のロシア逃亡後、シャラア(Ahmed al-Sharaa)大統領が率いる政権が発足し、内戦と国際的孤立の影響で疲弊した経済の立て直しを進めている。フスリエ氏は声明で、通貨交換の締切日や交換場所の決定権は中銀が有していると述べ、詳細は12月27日の記者会見で明らかにするとした。
関係筋によると、新しい紙幣では通貨単位からゼロを二つ除くデノミネーション(桁落とし)が行われる予定で、これは通貨価値の極端な下落に対処し、市場の信頼を回復するための措置として検討されてきた。デノミ実施はシリア・ポンドの桁数を減らし、計算や取引の簡素化を図るとされるが、インフレ懸念を完全に払拭するものではないとの指摘もある。実際、一部の銀行関係者は新通貨への移行がインフレを加速させ、現地住民の購買力をさらに損なう恐れがあると懸念を示している。フスリエ氏は「通貨交換は円滑かつ秩序ある形で行われる」と強調した。
通貨交換はアサド政権の崩壊から約1年後に開始される。アサド氏は2024年12月に反政府勢力の攻勢を受けてロシアに逃亡、約13間続いた内戦と政権の終焉を迎えた。シリアでは12月初旬にアサド退陣の1周年記念行事が各地で祝われた。
シリア・ポンドは内戦前は米ドルに対して50ポンド前後で取引されていたが、戦争と制裁の影響で価値が急落し、数千ポンドが続いてきた。今回の通貨交換は新通貨の発行と合わせて、ポンドの信認回復と経済の安定基盤構築を目指す大規模な金融改革と位置づけられている。
ただし、通貨改革の実効性については見方が分かれている。専門家の一部は、通貨交換が物価高騰を抑える効果を持つ可能性を評価する一方で、供給不足や消費者心理への影響が予想以上に大きくなるとの懸念を示している。また、新通貨が国際金融市場でどの程度受け入れられるかも未知数であり、経済再建の成否は今後の実施状況や国際的な支援の有無に左右されるとみられている。
