シリア政府、アサド政権時代の集団墓地を封鎖、刑事捜査始まる
問題となっている埋葬地は首都ダマスカス東方の砂漠に位置し、かつてアサド政権下で軍事用武器庫として使われていた施設の敷地内にある。
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シリア政府がアサド前政権時代に秘密裏に造られた集団墓地の管理を強化し、刑事捜査を開始した。この動きはロイター通信による一連の調査報道で埋葬地の存在と隠蔽工作が明らかになった後に実施されたものである。
問題となっている埋葬地は首都ダマスカス東方の砂漠に位置し、かつてアサド政権下で軍事用武器庫として使われていた施設の敷地内にある。元軍将校の証言によると、この兵器庫は2018年に閉鎖され、秘密作戦が進められた。この作戦では、ダマスカス郊外にあった別の大規模な集団墓地から何千もの遺体が掘り起こされ、トラックで1時間以上離れたこの武器庫跡地へ運ばれ再埋葬されたという。
暫定政権はこの埋葬地を軍の管理下に置き、兵士を配置して警備を強化した。以前は無人の状態で放置され、ロイターの記者が複数回訪問してその存在を確認した。当局は敷地入り口に検問所を設け、国防省発行の許可証を持つ者以外の立ち入りを制限しているという。砂漠地帯を横断する道路は、いまだにイスラム国(ISIS)残存勢力の拠点とダマスカスを結ぶ戦略的なルートとなっており、政府は管理強化の理由の一つとして「敵対勢力による悪用防止」を挙げている。
11月には警察当局が正式に捜査を開始。捜査の一環として埋葬地の写真撮影、土地調査、関係者の聴取などを実施したとしている。聴取された人物の一人はロイターの取材に対し、「作戦期間中、遺体を運ぶトラックの修理をした」と証言した。
暫定政権は武器庫の再稼働や墓地捜査に関するコメントを出していない。これに対し、アサド政権崩壊後に設立された「行方不明者全国委員会」は、国際基準に沿った遺体の発掘作業に向けて人員教育や研究所設立を進めていると説明した。同委員会は、この墓地を含むアサド時代の多数の埋葬地での発掘作業を2027年までに開始する予定であるという。
警察の捜査報告書は検察に引き継がれ、アサド時代の関係者とみられる人物のデータが、新政府が掌握した文書や証拠と照合されている。検察は調査中であることを理由に、容疑者の詳細については明らかにしていない。
この埋葬地に関する疑惑は、アサド時代の人権侵害と隠蔽行為を象徴するものとして国際的にも注目されている。新たな捜査と今後の発掘作業は、シリア国内外で失踪した数万人の捜索と責任追及の一助となる可能性がある。
