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サウジアラビアとパキスタンが「相互防衛協定」締結

サウジアラビアとパキスタンの関係は宗教的、経済的、軍事的な側面で深く結びついてきた。
サウジアラビアのサルマン皇太子(右)とパキスタンのシャリフ首相(AP通信)

サウジアラビアとパキスタンが相互防衛協定に調印した。パキスタンの国営メディアが17日に報じた。

この協定は数十年にわたる安全保障上の連携を大幅に強化するものだ。

パキスタン首相府によると、この協定は両国が安全保障を強化し、地域および世界の安全と平和を達成するという共通の決意を反映したものであり、両国間の防衛協力の側面を発展させ、いかなる侵略に対する共同抑止力を強化することを目的としている。

協定ではいずれかの国に対するいかなる侵略も、両国に対する侵略とみなすことが明記されている。

サウジアラビアとパキスタンの関係は宗教的、経済的、軍事的な側面で深く結びついてきた。両国は共にイスラム教を国の基盤とし、特にサウジはイスラム教の聖地を抱える「守護者」としての立場を持ち、パキスタンは世界有数のイスラム人口を有する国家として互いに強い宗教的親近感を共有している。1970年代以降、パキスタンは中東での出稼ぎ労働者を大量に送り出し、サウジ国内の建設業やサービス業を支えた。これによりパキスタン経済にとって重要な外貨送金源が形成され、両国の結びつきは経済面でも強固になった。

軍事分野では、サウジがパキスタンの軍事的支援を長年受けてきた。パキスタン軍の将校がサウジ軍の教育や訓練に関わり、また湾岸戦争や地域の不安定化に際しても協力関係を示した。さらに、サウジがパキスタンの核開発を財政的に支援したのではないかという指摘もあり、両国は安全保障分野で相互依存関係を築いたとされる。

一方で、両国関係は必ずしも順調ではない。サウジは伝統的に米国との関係を基盤にし、パキスタンも米国や中国とのバランス外交を行っているため、地域の地政学的な対立構図に巻き込まれる場面がある。特にイランとの関係では、サウジとイランが対立する中、パキスタンはシーア派人口を国内に抱えることから中立姿勢を維持せざるを得ず、サウジの要望に全面的に応じられない局面もある。

経済面では、サウジがパキスタンに対して融資や原油の優遇供給を行うなど支援を続けてきたが、パキスタン経済の不安定さが関係を不均衡なものにしている。サウジはパキスタンの戦略的重要性を評価しつつも、その政治的混乱や経済改革の遅れに懸念を抱いている。両国は宗教と安全保障を基盤に密接な関係を維持してきたが、地域情勢や大国間の対立に影響されやすい脆さを内包しているといえる。

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