サウジアラビア当局、礼拝施設襲撃計画で2人の死刑執行
この2人は治安機関や要員へのテロ攻撃を計画したとされる。
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サウジアラビア当局は9日、礼拝施設への襲撃を計画したとして逮捕・起訴された自国民2人の死刑を執行したと発表した。
国営メディアによると、この2人は治安機関や要員へのテロ攻撃を計画したとされる。
それ以上の詳細は明らかになっていない。
サウジアラビアの死刑制度はイスラム法(シャリア)を基礎とする法体系の中に位置づけられている。刑罰の枠組みは大きく三種類に分かれており、「ハドゥード(hudūd)」「キサース(qiṣāṣ)」「ターズィール(ta‘zīr)」がそれに当たる。
ハドゥードは聖典コーランや預言者ムハンマドの言行(ハディース)によって定められた固定刑罰で、姦通・背教・強盗・反逆・酒の摂取など、神に対する重大な罪とされる行為が対象となる。
キサースは報復刑の原則に基づき、殺人や重傷害の場合に被害者遺族が加害者に対して同等の報復(死刑など)を求めることができる制度である。被害者家族が加害者を赦すか、金銭的な補償(ディヤ)を受け入れれば、死刑は回避される場合もある。
ターズィールは裁判官の裁量に委ねられる刑罰であり、ハドゥードやキサースに該当しない犯罪について、状況に応じて死刑を含む様々な刑罰が科される。
死刑の対象となる犯罪は広範で、殺人・テロ行為・強姦・武装強盗などのほか、薬物密輸や宗教・政治的反体制行為にまで及ぶ。特に薬物犯罪に対しては、暴力行為を伴わなくても死刑が適用される場合があり、国際人権団体からは「最も重大な犯罪(intentional killing)」に限定すべきとする国際基準に反しているとの批判がある。また、外国人労働者が薬物運搬などで逮捕され、通訳や弁護士が不十分なまま有罪判決・死刑執行に至る例も報告されている。
執行方法は主に公開での斬首であり、まれに銃殺刑が用いられる。刑の執行は通常、首都リヤドやメッカなどの主要都市で行われるが、詳細は公にされないことが多い。
裁判過程では、自白の強要や弁護権の制限が指摘されており、国際的には「公正な裁判を受ける権利」が十分に保障されていないと批判されている。特に反政府活動や宗教的少数派(シーア派など)に対して、死刑が政治的抑圧の手段として用いられているとの見方もある。
サウジアラビア政府は近年、部分的な改革を打ち出している。2020年には、18歳未満で犯罪を犯した者に対してターズィール罪の範囲では死刑を科さないとする王令を発表した。また、鞭打ち刑を廃止するなどの刑罰改革も進めているとされる。
しかし、実際には未成年時の犯罪者に対する死刑執行が続いており、改革の実効性には疑問が残る。さらに、2024年には年間200件を超える死刑が執行されたと報じられ、死刑制度の抑制どころか、むしろ運用が強化されているとの指摘もある。
