◎フランシスコ教皇は演説の中で、イラクのキリスト教徒はより大きな役目を果たすべきだと呼びかけた。
2021年3月5日/イラク、首都バグダッドの空港、フランシスコ教皇(AP通信/アンドリュー・メディチーニ)

3月5日、フランシスコ教皇は初めてのイラク訪問で暴力と過激主義の終焉を呼びかけた。

教皇はコロナウイルスの影響で約1年間国外での演説を自粛していた。

感染症の専門家は教皇がイラクを訪れることで数万人が一カ所に集まり大規模なクラスターの発生につながる可能性があると警告していた。なお、教皇はコロナワクチンの接種(2回)を終えている。

教皇は演説の中で、イラクのキリスト教徒は完全な権利と自由、そして顕著な役割を持つべきだと述べた。

教皇はシーア派イスラム教の高官らと宗教観対話を行い、北部イルビルのスタジアムでミサを行う予定。これに伴い、政府は約1万人のイラク治安部隊を各所に配備し、コロナの感染拡大も兼ねた24時間の外出禁止令を市民に課している。

空港に到着した教皇はムスタファ・アル・カディミ首相と国民服を着た関係者らの歓迎を受け、車に乗り込んだ。

教皇は坐骨神経痛の影響で足を引きずる姿が目立ち、階段の上り下りに苦労していた。

救いの聖母大聖堂で歓迎の演説を行ったバルハム・サリフ大統領は、コロナ禍における教皇の訪問を心から歓迎し、非常に嬉しく思うと述べた。

バルハム・サリフ大統領:
「フランシスコ教皇は暴力と過激主義、派閥と不寛容に終止符を打つためにイラクを訪れました」

「イラクは戦争、テロの惨劇、宗派間の対立に悩まされてきました。民族的および宗教的理由から平和的共存を受け入れることができない原理主義は今もイラクを蝕んでいます」

2021年3月5日/イラク、首都バグダッド、フランシスコ教皇とバルハム・サリフ大統領(AP通信/アンドリュー・メディチーニ)

フランシスコ教皇は演説の中で、イラクのキリスト教徒はより大きな役目を果たすべきだと呼びかけた。

フランシスコ教皇:
「この土地で生まれ育ったキリスト教徒は全ての人々に奉仕し続けることを望んでおり、人々の奉仕が豊かな遺産を構築しました。イラクの多様性はかけがえのない貴重な資源であり、大切にしなければなりません」

「イラクは中東のすべての人々に、紛争ではなく、多様性が社会生活の調和と協力につながることを示すよう求められています。武器ではなく、奉仕する心と多様性を持つことが何より大切だと私は確信しています」

教皇がミサを行った救いの聖母大聖堂は2010年にジハード主義者による攻撃を受け、50人以上が死亡した。当局者は現地メディアの取材に対し、「イラクの人々は教皇がここでミサを行う意味を理解しています」と述べた。

イラクのキリスト教徒の数は、2003年のサダム・フセインの追放以降に発生したシーア派とスンニ派イスラム教徒の間の悪質な宗派間の暴力、アラブ人とクルド人の間の衝突と緊張、キリスト教徒やヤズィーディー教徒などの少数派に対する残虐行為などの影響で激減した。報告によるとイラク国内のキリスト教徒の数は、過去20年間で140万人から25万人ほどに減少したという。

2014年頃から活動を本格化させたイスラム国(IS)はイラク北部の歴史的な教会を破壊し、暴力と混乱から逃れるために、多くのキリスト教徒が国外に避難した。

イラクに残ったキリスト教徒もイスラム教徒の隣人に対して不信感を抱いており、ISが登場するはるか前から深刻な差別に悩まされ続けている。

国外の避難先からイラクに戻ったキリスト教徒は非常に少なく、戻りたいと思っている者の多くが自宅を破壊され、帰りたくても帰れない状況に置かれている。また、多くのキリスト教徒が一部の地域を支配しているシーア派民兵に脅迫され、「命の危険を感じる」と主張する者も少なくない。

今回のイラク訪問は、イスラム世界との関係改善を目指してきた教皇の長年の努力と一致しており、スンニ派の聖職者であるシェイク・アフメト・エル・タイブ氏との友情がこの勢いを加速させている。

教皇は3月6日にイラクを代表するシーア派の聖職者、グランド・アヤトラ・アリ・アル・シスターニ氏と会談する予定である。なお、市民の参加はコロナの感染予防対策に基づき、厳しく制限されると伝えられている。

3月7日には、ISとの戦争で命を落とした数万人の民間人のためにチャーチスクエアで祈りを捧げる予定。

2021年3月5日/イラク、首都バグダッドの救いの聖母大聖堂(AP通信/アンドリュー・メディチーニ)
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