◎イラクを訪問中のフランシスコ教皇(84歳)は、聖地ナジャフでシーア派聖職者のグランド・アヤトラ・アリ・アル・シスターニ氏(90歳)と会談した。
2021年3月6日/イラク、首都バグダッドのカルデア大聖堂、フランシスコ教皇の到着を待つ人々(AP通信/アンドリューメディチーニ)

3月6日、イラクを訪問中のフランシスコ教皇(84歳)は、聖地ナジャフでシーア派の聖職者、グランド・アヤトラ・アリ・アル・シスターニ氏(90歳)と会談した。

世界のシーア派の中で最も著名なアル・シスターニ氏は会談の中で、「キリスト教徒はイラクで平和に暮らし、他のイラク人と同じ権利を享受すべきです」と述べた。これに対し教皇は、近年の極めて残酷な暴力で虐げられ、迫害された者たちを守るためにイラクのトップが声を上げてくれたと感謝した。

アル・シスターニ氏は、シーア派イスラム教の中で最も上級の聖職者の1人であり、イラクおよび世界中のシーア派イスラム教徒から尊敬されている。同氏の強力な政治介入は、現在のイラクの構築に大きな影響を与えた。当局者によると、二人の会談は数カ月前から細部まで綿密に計画され、ようやく実現に至ったという。

防弾仕様のメルセデスベンツでナジャフに到着した教皇は入り組んだ狭い路地を進み、アル・シスターニ氏の待つ施設に向かった。

AP通信によると、アル・シスターニ氏は教皇を自ら施設に招き入れたという。政府当局者は、「シーア派のトップ聖職者が自ら玄関に立って客人を迎え入れることは極めて異例」と述べた。

教皇はアル・シスターニ氏の両手を握った状態で話を聞き、時折笑顔を見せた。

政府当局者は、教皇が前日に多くの関係者と会ったことを懸念していると述べた。教皇はコロナワクチンの接種を終えているが、アル・シスターニ氏はまだ接種していない。また、アル・シスターニ氏は昨年、太ももを骨折し手術を受けたという。

会談終了後、教皇の事務所は声明を発表した。

「アル・シスターニ氏は、イラクで生活するキリスト教徒はすべてのイラク人と同じように安全と平和を享受し、完全な憲法上の権利を持って生きるべきであると断言しました。また、宗教当局は過去数年間の出来事で危害を被ったキリスト教徒を保護する役目を果たすべきと指摘しました」

アル・シスターニ氏は教皇とカトリック教会の信者が幸せになることを望み、足を引きずってナジャフまで歩いてきてくれたことに感謝すると述べました

教皇は骨神経痛の影響で足を引きずっており、関係者に支えられることが多々あったと伝えられている。

2021年3月6日/イラク、ナジャフ、シーア派聖職者のグランド・アヤトラ・アリ・アル・シスターニ氏とフランシスコ教皇(AP通信/アンドリューメディチーニ)

2003年の米国主導の侵攻以来、シーア派の過半数がスンニ派過激派勢力の攻撃を受けたことで、スンニ派の民間人に対する残忍な報復が各地で発生し、それ以来宗派間の暴力はやむことなく続いている。

イスラム国(IS)との戦争が始まった時、アル・シスターニ氏は健常者に治安部隊に加わるよう呼びかけ、連合軍とのIS撲滅作戦に大きな影響を与えた。その後、ISとの戦争は終結したが、スンニ派とキリスト教徒を差別するシーア派民兵は活動を続けており、政府当局者を悩ませている。

6日午後、教皇はカルデア大聖堂でミサを行った。

「信仰が生まれたこの場所から、私たちの父アブラハムが生まれたこの地から伝えます。最大の冒涜は、私たちの兄弟姉妹を憎むことによって神の名を冒涜することだと断言します」

「敵意、過激主義、暴力は宗教的な心から生まれたものではありません。それらは宗教に対する裏切りです」

ミサの出席者は、シーア派、スンニ派、キリスト教徒、ヤズィーディー教徒、ゾロアスター教徒、クルド人、サバアン教徒やマンダ教徒などの小規模な宗派を信仰する人々など。

教皇は7日に北部のモスルを訪問する予定。ここはかつてISに支配され、拠点として利用された地域である。教皇はスンニ派イスラム過激派組織との戦争で犠牲になった民間人数万人のために祈りを捧げる。

2014年に北部地域を支配したISは、貴重なキリスト教の教会を数多く破壊した。なお、2017年の戦争終結以来、キリスト教徒は少しずつ同地域に戻っている。

モスルを訪問した後はアルビール市のサッカースタジアムでミサを行う予定。当局者によると、参加者は最大10,000人を見込んでいるという。

2021年3月6日/イラク、首都バグダッドのカルデア大聖堂、フランシスコ教皇(AP通信/アンドリューメディチーニ)
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