SHARE:

米軍、イラクでの軍事任務縮小へ=国防総省

米国は2025年初頭時点で、イラクに約2500人、隣国シリアに900人以上の兵力を展開していた。
イラク、首都バグダッドのグリーンゾーン、米陸軍の兵士(Getty Images)

米国防総省は9月30日、イラクにおける軍事任務を縮小すると表明した。

それによると、今後はイラク政府がイスラム国(ISIS)残党との戦いを指揮するようになるという。

計画では、米国と連合軍は代わりにシリア国内のISIS残党掃討に注力し、その任務遂行のため、人員の大半をイラク北部クルド人自治区に移す予定。

米国は2025年初頭時点で、イラクに約2500人、隣国シリアに900人以上の兵力を展開していた。

移行が完了すると、イラク駐留米軍総数は2000人未満となり、その大半がアルビルに配置される見通しである。最終的な人数は未定で、時期についても明らかになっていない。

首都バグダッドに残留する米軍は、対ISIS作戦ではなく通常の二国間安全保障協力に注力する。

ISISの台頭以降、イラクにおける米軍の軍事任務は大きく変化してきた。2014年、ISISがイラク北部のモスルをはじめとする広範な地域を制圧し、「イスラム国」の樹立を宣言したことを受け、米国は再びイラクへの軍事関与を強化することとなった。これにより、オバマ政権下で開始された「インヘレント・リゾルブ作戦」のもと、米軍は有志連合の中核として、イラク政府軍およびクルド人武装勢力(ペシュメルガ)への軍事支援を行った。

当初の任務は、ISISの拡大を阻止するための空爆と、地上部隊への軍事顧問・訓練支援に重点が置かれていた。米軍は前線に出ることを避け、あくまでイラク軍と地元民兵組織を主体とした地上戦を後方から支援するという形を取った。これにより、2017年にはイラク政府がモスル奪還を宣言し、ISISは組織的な支配領域をほぼ失うに至った。

しかし、ISISが完全に消滅したわけではなく、以降は地下に潜伏した形でゲリラ的な攻撃を継続している。そのため、米軍の任務は対テロ戦から安定化支援、治安部隊の能力構築へと移行していった。訓練や装備支援、情報共有などを通じて、イラク治安部隊が自立して治安維持を行えるよう支援することが目的とされた。

一方で、イラク国内では米軍駐留に対する反発も強まりを見せた。特に2020年、米国がバグダッドでイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した事件を契機に、イラク議会は外国軍の撤退を求める決議を採択した。この事件以降、親イラン系民兵組織による米軍基地への攻撃が頻発し、米軍と民兵との間で緊張が高まった。

2021年には、バイデン政権がイラク政府との合意に基づき、米軍の戦闘任務を同年末までに終了すると発表した。それ以降も米兵はイラクに駐留しているが、任務はあくまで助言・訓練・情報支援に限定され、戦闘行動は基本的に行っていない。ただし、ISIS残党の活動や中東地域の地政学的リスクを踏まえ、完全撤退には至っていない。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします