◎正規軍の司令部は7日早朝、アサド政権の支配が終わったことを認めた。
シリアの反体制派が7日、首都ダマスカスを制圧し、アサド政権の終焉と「復讐のない新時代」の始まりを宣言した。
カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは関係者などの話しとして、「アサド(Bashar Assad)大統領は家族を連れて国外に逃亡した」と伝えている。どこに逃れたかは明らかになっていないが、複数の欧米メディアがロシアの首都モスクワと報じている。
イスラム過激派組織「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」とその同盟組織は先月、アサド政権の支配下にある北部アレッポ県に攻め込み、全土を制圧。正規軍への攻撃を本格化させた。
HTSはその後、中部の要衝ハマに侵攻。正規軍はハマから撤退したことを認めた。
HTSは第3の都市ホムスもあっさり制圧した。
ハマの西側はアサド政権を支援するロシアや民兵の拠点が数多くあるラタキア県に接している。ラタキアにはロシアの空軍基地があり、中東と地中海におけるロシアの勢力拡大にとって重要な拠点のひとつとみなされている。
ダマスカスに入った反体制派の戦闘員たちは勝利を祝い、空に向かって銃を乱射。HTSの司令官は「復讐のない新時代が始まる」と宣言し、在外シリア人に帰還を呼びかけた。
アサド政権と敵対する野党連合も声明を出し、「アサド政権は崩壊した」と宣言、祝意を表した。
ダマスカスの首相府は声明を発表。国民に対し、自宅にとどまるよう促した。
また首相府は反体制派と協力する用意があると表明。公的機関の機能維持に向けた協議を行いたいとしている。
HTSの指導者であるアルジュラニ(Abu Mohamed al-Julani)氏は7日、反体制派の戦闘員に対し、公共機関や施設を攻撃しないよう改めて命じた。
アルジャジーラによると、ダマスカスの中心部にはアサド政権の崩壊を祝う市民が集まっているという。
戦闘員たちはダマスカス北部のサイドナヤ刑務所に収容されていた囚人たちを解放した。戦闘員たちは他の都市でも囚人や捕虜を解放している。
ロイター通信によると、正規軍の兵士たちはアサド氏の国外逃亡に安堵し、武器を置いたという。正規軍の司令部は7日早朝、アサド政権の支配が終わったことを認めた。
ダマスカスの北方に位置するホムスでも正規軍の兵士が武器を置き、反体制派を出迎えた。
ラタキアにあるロシアの空軍基地がどのような扱いを受けるかは不明だ。ロシア政府はダマスカス陥落に関するコメントを出していない。
反体制派はアサド政権の同盟国であるロシアとイランが別の戦争に気を取られているスキを突き、劇的な勝利を収めた。
アサド氏を支援してきたレバノンの過激派ヒズボラもイスラエルとの戦争で弱体化している。
シリア内戦の犠牲者は50万~60万人と推定されている。被害の全容は明らかになっておらず、調査が進む目途も立っていない。