原油は小幅安、投資家が米経済指標と地政学的緊張を評価
市場では米国経済の予想外の強さと供給面のリスクが価格の重荷と支えの両方になっている。
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12月24日、原油価格は前日の上昇から一転して小幅に下落し、投資家が米国の経済指標や地政学的リスクを見極める中、2025年の原油市場が大きな変動に直面している。ブレント先物は前日比14セント(0.2%)安の1バレル=62.24ドル、米国のWTIは同3セント(0.05%)安の58.29ドルで取引を終えた。両指標は12月16日に付けたほぼ5年ぶりの安値から約6%上昇しているものの、年間では大幅な下落が続いている。
市場では米国経済の予想外の強さと供給面のリスクが価格の重荷と支えの両方になっている。米商務省の統計によると、米国の25年第3四半期(7〜9月)のGDPは予想を上回る伸びとなり、2年ぶりの高成長を記録した。この成長は燃料需要の底堅さを示唆する一方、投資家のリスク選好を高める要因となった。
一方で、供給面では南米と欧州の地政学的緊張が懸念材料となっている。
米国がベネズエラに対する海上封鎖を実施しており、複数の原油タンカーが出港指示を待つ状況にあるとされる。また、ロシアとウクライナ間でエネルギーインフラを狙った攻撃が続き、これらのリスクが原油供給に不透明感をもたらしている。これらの要因は短期的な価格支援にはなるものの、長期的な供給不足には直結していないとの見方もある。
昨今の原油市場は供給過剰観測と弱い需要予想から、来年にかけて供給が需要を上回るとの見通しが依然として根強い。複数のアナリストは、世界的な原油供給が増加傾向にあることを指摘している。OPEC加盟国および主要産油国が生産を維持または引き上げる一方で、需要の伸びが鈍化しているとの分析もある。こうした供給過剰懸念は原油価格に下押し圧力をかけており、2025年の年間でブレントとWTIはそれぞれ約16%、約18%の下落となる見込みだ。
米国内の在庫統計については、石油協会(API)によると、先週の原油在庫は増加、ガソリンやディーゼルの在庫も拡大している。この結果、需給バランスへの懸念が再燃している。米エネルギー情報局(EIA)の在庫データはクリスマス休暇の影響で通常より遅れて発表される予定だ。
投資家心理は、薄商いの年末取引で一段と揺れ動いている。市場関係者は「変動の激しい休暇取引は通常通り」と述べ、ベネズエラ封鎖を巡る動きが今週の焦点であると強調した。地政学的リスクと米国経済指標の双方が価格形成に影響を及ぼしているものの、需給ファンダメンタルズが弱いままである限り、大幅な反発は期待しにくいとの見方が優勢だ。
