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国境なき医師団、ガザ地区の医療活動を一部停止

ナセル病院はガザ地区で数少ない稼働中の総合病院の一つであり、これまで数多くの負傷者や難民が治療を受けてきた。
国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」の医師(Getty Images)

国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」 は14日、パレスチナ・ガザ地区南部のナセル病院での医療活動を一部停止したと発表した。MSFによると、病院内で複数の武装した人物の存在が確認され、患者や職員が銃を携帯した者を目撃したほか、武器の移動が疑われる状況も報告されたためだとしている。これらの安全上の問題が、医療施設としての中立性を損なう重大な脅威になっていると指摘している。

MSFは声明で、ガザ南部ハンユニスにあるナセル病院での一部医療活動を1月20日付で停止したと明らかにした。中止されたのは小児科、産科(新生児集中治療室含む)、精神保健、外来の火傷治療や検診など、住民にとって必須とされる部門が多く含まれている。重傷患者に対する入院治療や外科手術など、生命維持に直結するサービスは引き続き提供する方針だとしている。

MSFの声明では、病院内で「マスクを着用した武装した者」を含む武装勢力の存在が複数回確認されているとし、停戦合意後の数カ月でこうした事案が増加しているとの認識を示している。また、患者への威圧行為や拘束といった行為も報告され、医療スタッフと患者の安全が脅かされていると訴えた。MSFは関係当局にも懸念を伝え、中立的・民間の空間としての病院の安全確保が必須だと強調している。

ナセル病院はガザ地区で数少ない稼働中の総合病院の一つであり、これまで数多くの負傷者や難民が治療を受けてきた。2023年10月の戦闘激化以降、同病院は人質交換の場としても利用されるなど、地域の医療・人道支援の中心的施設となっていた。国際法では戦時下における医療施設は中立的な治療拠点として保護されるが、武装勢力の利用がある場合にはこの保護が失われることがある。

病院での武装勢力の存在について、地元当局はコメントしていない。MSFは武装していた人物の所属や動機について「特定はできない」としつつ、中立性が損なわれる状況が続けば、さらなる医療活動の見直しもあり得ると述べた。

MSFの活動中止はガザの医療体制に深刻な影響を与える可能性がある。MSFが支援してきた小児科や産科治療の中止は、特に妊産婦や重度の火傷患者、子どもたちへのケアに大きな影響を及ぼすとみられている。MSFは国際的な医療支援団体として、イスラム組織ハマスを含む武装勢力の影響を排除し、医療施設の中立性を維持することの重要性を改めて訴えている。

イスラエル軍はこれまで、ハマスが病院内やその周辺で活動していると主張し、病院を攻撃対象とする正当性の根拠としてきた。一方、パレスチナ側や人権団体は医療施設への攻撃は国際法違反であると非難し、民間人への被害拡大を懸念している。こうした中、MSFの声明はガザの医療現場が抱える複雑な安全保障上の問題を浮き彫りにした。

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