湾岸諸国の市場、原油高と米利下げ観測で上昇、懸念も
原油は湾岸諸国の経済・金融市場にとって最大の基盤であり、価格上昇は投資家心理を改善させる要因となる。
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中東・湾岸地域の主要株式市場は21日、原油価格の上昇や米国の金融政策をめぐる思惑を受けて、総じて上昇して取引を終えた。投資家の間では米連邦準備制度理事会(FRB)が今後利下げに踏み切るとの期待が高まっており、これがリスク資産への買いを誘った。
この日、原油価格は堅調に推移した。原油は湾岸諸国の経済・金融市場にとって最大の基盤であり、価格上昇は投資家心理を改善させる要因となる。原油の強含みは米国によるベネズエラ向けタンカーの封鎖懸念やロシア・ウクライナ戦争をめぐる不透明感が供給リスクを刺激しているためだとの指摘がある。
市場別では、サウジアラビアの主要株価指数が0.3%上昇、最大手サウジアラムコの株価は0.8%上昇となった。またアール・ラジ銀行も0.2%高で推移した。カタールでは株価指数が0.6%上昇、石油化学大手インダストリーズ・カタールの株価が同程度上昇した。こうした動きはエネルギーセクターへの投資マネー流入を反映している。
米国の経済指標も市場心理に影響を与えた。11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.7%上昇と、市場予想を下回る伸びにとどまった。同時に失業率が4.6%に上昇し、2021年9月以来の高水準となったことが伝えられた。こうしたデータを受け、トレーダーらはFRBが2026年に複数回の利下げを実施する可能性を織り込み始め、少なくとも2回の0.25%ポイントの利下げ期待が高まっている。湾岸諸国の通貨は米ドルにペッグ(連動)しているため、米国の金融政策が地域市場に与える影響は大きい。
一方、域外市場でも動きが見られた。エジプトの株価指数は3営業日ぶりに反発し、主要銀行であるコマーシャル・インターナショナル・バンクの株価が3.2%上昇した。これはエジプト市場における先行きの回復期待を示す動きとして注目された。
アラブ首長国連邦(UAE)の市場も概ね堅調だった。同地域では先週後半の原油価格持ち直しを背景に、投資家の買いが活発化した。ドバイやアブダビの株価指数もプラス圏で推移し、とくにエネルギー関連株や金融株に強さが見られた。ただし、一部銘柄では利益確定売りも出ており、指数全体の伸びは限定的だった。
こうした動きは世界的な金融市場のセンチメントがFRBの政策動向に強く左右されていることを反映している。市場参加者は今後の米国のインフレ動向や雇用統計、さらにはFRBの政策声明を注視しており、その内容次第では来年の投資戦略が大きく変わる可能性がある。湾岸市場はエネルギー価格の動きに加えて米金融政策への感応度が高く、今後も外部要因に左右される展開が続く見通しだ。
