◎ファクリザデ氏は首都テヘラン郊外で何者かに銃撃を受け暗殺された。
モフセン・ファクリザデ氏の葬儀(ロイター通信)

イランの裁判所は23日、米国政府に対し、2020年11月末に暗殺されたイランの著名な核科学者モフセン・ファクリザデ(Mohsen Fakhrizadeh)氏の遺族に賠償金43億ドルを支払うよう命じた。

ファクリザデ氏は首都テヘラン郊外で何者かに銃撃を受け暗殺された。イラン当局は宿敵イスラエルと反体制派の犯行と示唆しているが、容疑者は特定されていない。

イランは10年ほど前から核科学者を狙った殺人事件でイスラエルを繰り返し非難してきたが、今回の判決では米国だけを非難した。

国営メディアによると、判事は米国がシオニズムを後押しし、犠牲者に対する組織的犯罪を助長したと指摘している。

イラン核合意をめぐる欧米とイランの協議はほとんど進展していないとみられる。

米国のトランプ(Donald Trump)前大統領は2018年にイラン核合意から離脱し、イランの外国資産を凍結したうえで、イランの原油、天然ガス、石油化学製品などに対する投資を禁止した。

バイデン(Joe Biden)大統領は核合意への復帰を望んでいるが、交渉は米国がイランの準軍事組織である「イラン革命防衛隊(IRGC)」をテロ組織に指定したことをめぐり、ここ数週間停滞している。

一方、イランはロシアによるウクライナ侵攻で国際的な監視が弱まる中、兵器級に近いウラン濃縮を進めている。

イラン当局は今月初め、国際原子力機関(IAEA)の監視カメラ27台を撤去した。IAEA事務局長はこれを非難し、「核合意交渉に致命的な影響を与えかねない」と警告した。

イランとイスラエルは中東とその海域をめぐる戦争を繰り広げてきた。この対立は最近、イランの核科学者や軍関係者がイスラエルの攻撃で殺害されたと疑われたことでエスカレートしている。

イスラエル政府はファクリザデ氏の暗殺に関する声明をひとつも出していない。

イランはIRGCの精鋭部隊「コッズ部隊(Quds Force)」のソレイマニ(Qasem Soleimani)司令官が暗殺されたことへの報復として、テロと人権侵害の疑いで米国の政治家や軍関係者に制裁を科している。

ソレイマニ氏は2年前に暗殺された。米国は殺害を認めたものの作戦の詳細は公表していない。一部メディアはドローンが使用されたと報じている。

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