◎パレスチナの過激派「黒い九月」は50年前の9月、ミュンヘン五輪の選手村でイスラエルの代表選手11人とドイツ人警察官1人を殺害した。
パレスチナ自治政府のアッバス(Mahmud Abbas)議長は16日、訪問先のドイツでミュンヘン五輪襲撃事件に関する質問を受け流し、パレスチナ人に対するイスラエルの暴力を「ホロコースト」と非難した。
パレスチナの過激派「黒い九月」は50年前の9月、ミュンヘン五輪の選手村でイスラエルの代表選手11人とドイツ人警察官1人を殺害した。このグループはアッバス氏のファタハとつながっていた。
アッバス氏は記者から「パレスチナの指導者としてイスラエルとドイツに謝罪する計画があるか」と問われると、代わりにイスラエルの残虐行為をホロコーストと表現した。
アッバス氏はショルツ(Olaf Scholz)首相との共同記者会見で、記者団に、「過去を振り返りたいならどうぞ」と語り、イスラエルの大量虐殺を糾弾した。「イスラエルは50のホロコースト、50の大量虐殺を行いました...」
ショルツ氏はアッバス氏がホロコーストという言葉を使うと苦笑いを浮かべた。
ドイツ政府は長い間、ホロコーストという言葉はナチスのユダヤ人大量虐殺にのみ使うべきと主張してきた。
ショルツ氏は以前、アッバス氏がイスラエルの占領を「アパルトヘイト」と表現したことに懸念を表明したが、今回ホロコーストという言葉が使われてもその場では反論しなかった。
日刊紙ビルトは記者会見後、ショルツ氏のインタビューを引用し、「他の問題とホロコーストを比較すべきではない」と報じた。
キリスト教民主同盟(CDU)のラシェット(Armin Laschet)議員もアッバス氏の発言に怒りを表明した。「アッバス氏はミュンヘン事件を素直に謝罪しておくべきでした。そうすれば、多くの同情を得られたでしょう...」
アッバス氏はイスラエルのホロコーストを非難する一方、「イスラエルとの紛争を平和的に解決すると約束する」とも述べた。
イスラエルのラピド(Yair Lapid)首相は16日、アッバス氏の発言を「恥」と一蹴した。「これは道徳的な恥であり、とんでもない恥です」
ラピド氏はパレスチナ占領には言及せず、「ホロコーストでは600万人のユダヤ人が殺害され、その中には150万人の子供が含まれる」とツイートした。「アッバス氏は自分の発言を悔いるべきです...」
ドイツ政府は50年前に殺害されたイスラエル選手の親族への対応でも論争に巻き込まれている。
犠牲者の家族は先週、ドイツ政府との補償に関する協議が決裂したため、9月に予定されている50周年式典をボイコットすると表明した。
家族らはドイツ政府が選手村の安全確保に失敗し、イスラエル政府の救援要請を拒否し、救出作戦にも失敗したと非難している。