◎レバノンは国民に補助金の一部としてパンを支給しており、小麦の価格高騰は飲食店や小売店だけでなく政府の運営に大きな影響を与える可能性がある。
2月25日、レバノン政府はロシアのウクライナ侵攻がウクライナ産小麦の輸入に影響を与える可能性があると懸念を表明した。
サラーム経済貿易大臣は25日の記者会見で約1か月分の小麦を備蓄していると明らかにしたうえで、ロシア軍の侵攻は国の小麦市場の約60%を占めているウクライナ産小麦の輸入に影響を与える可能性があると懸念を表明した。
またサラーム氏は小麦に関する懸念について米国、インド、カナダなどの関係国と協議していると明らかにした。
ウクライナは世界最大の小麦輸出国のひとつであり、世界の供給量の約10%を占めている。国連食糧農業機関によると、2019年の最大輸出国はロシア、2位は米国、3位はカナダ。
レバノンを含む一部の発展途上国は国民に補助金の一部としてパンを支給しており、小麦の価格高騰は飲食店や小売店だけでなく政府の運営に大きな影響を与える可能性がある。
2020年8月の爆発事故でベイルート港の穀物サイロは大きな被害を受けてしまい、政府によると、港に保管できる小麦の量はまだ最大1カ月分にとどまるという。
レバノンは近代史上最悪と呼ばれている経済危機の真っただ中にあり、貧困率は人口の90%近くに達し、通貨は暴落し、ハイパーインフレは国民の預金を紙屑に変え、失業率を前例のないレベルに押し上げた。
一部の専門家は今回のロシア侵攻で小麦の価格が高騰し、補助金の一部にパンを支給しているレバノンのような国に深刻な影響が出ると懸念している。
レバノンでは推定100万人のシリア難民が生活しており、その多くが貧困にあえいでいる。
サラーム氏は記者団に、「今回の侵攻は補助金に影響を与える可能性が高い」と述べた。「補助金の減額もあり得るでしょう...」
またサラーム氏は国民に対し、少なくとも1か月分の備蓄は確保しているため、パンの買い占めなどのパニックを起こさないよう呼びかけた。