◎サウジアラビアは10月末にレバノンの大使を追放したうえでレバノン製品の輸入を全面的に禁止した。
12月3日、レバノンのジョージ・コルダヒ情報相はサウジアラビアとの外交危機が収束することを望むと述べ、辞任した。
コルダヒ情報相は記者会見の中で、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がサウジアラビアを訪問する前に辞任することを決めたと明らかにした。マクロン大統領は4日にサウジを訪問し、危機の緩和に向けた協議を行う予定である。
テレビ番組の元司会者であるコルダヒ情報相は大臣就任前の8月に収録されたインタビューの中で、進行中のイエメン内戦を「無駄」と呼び、イエメンの大部分を支配するイスラム過激派組織フーシを擁護しサウジアラビアを激怒させた。
サウジ主導の連合軍は2014年以来、国際的に認められているイエメン政府と共にフーシ派と戦ってきた。世界最悪の人道危機を引き起こした内戦の死亡者数は両軍合わせて13万人を超え、民間人約12,000人が殺害されたと推定されている。
国連は9月、子供を含むイエメンの国民1,600万人が餓死の危機に瀕していると警告した。
サウジアラビアは10月末にレバノンの大使を追放したうえでレバノン製品の輸入を全面的に禁止した。
コルダヒ情報相は、大臣就任前のコメントは政府の見解ではないと主張し辞任を拒否していたが、3日の会見で危機を長引かせたことを認め、謝罪した。「私の辞任で危機が緩和することを願っています...」
レバノンは過去150年で世界最悪のひとつと見なされている経済危機の真っただ中にあり、貧困率は人口の75%を超え、通貨は暴落し、ハイパーインフレは国民の預金を紙屑に変え、失業率を前例のないレベルに押し上げた。
9月に新政権を発足させたナジブ・ミカティ首相はコルダヒ大臣の辞任を歓迎し、「王国(サウジ)との問題に取り組む扉を開くことができた」と述べた。
サウジアラビアの制裁は危機的状況にあるレバノンの経済をさらに圧迫し、国内企業の活動に深刻な影響を与えた。なお、コルダヒ情報相の辞任でサウジが対応を改めるかどうかは不明である。
レバノン政府が抱えている問題は経済危機だけではない。
昨年8月にベイルート港で発生した爆発事故に関する調査は抗議デモと分裂を引き起こした。調査を主導する裁判官はレバノンを牛耳るイスラム過激派組織ヒズボラにメスを入れると誓ったが、圧力の影響で調査は難航している。ヒズボラは核開発を進めるイランやフーシ派などに兵器を提供している。
ヒズボラの指導者であるハッサン・ナスララ氏はタレク・ビータール判事の調査は政治化されていると非難し、調査責任者を変更するよう政府に命じた。地元メディアによると、政府はヒズボラ派閥のコルダヒ情報相が辞任する代わりに、ビータール判事の撤退を約束した可能性があるという。
マクロン大統領の報道官は今週初めの会見で、「大統領はレバノンの沈没を防ぐために、サウジや他の湾岸諸国との協議を進め、関係が回復することを望んでいる」と述べた。
ヒズボラの後援者であるイランとサウジアラビアの関係は着実に悪化している。多くの専門家がレバノン政府は両国の争いに巻き込まれ沈没寸前と指摘した。