レバノン中銀のサラメ前総裁(75歳)保釈、汚職容疑で起訴
サラメ氏は1993年から2023年7月までおよそ30年間にわたり、レバノン中央銀行の総裁を務めた。
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レバノン中央銀行の前総裁であるサラメ(Riad Salameh、75歳)被告が26日、保釈された。
現地メディアによると、サラメ氏の弁護団が1400万ドルの保釈金を納付したという。
サラメ氏は1993年から2023年7月までおよそ30年間にわたり、レバノン中央銀行の総裁を務めた。
サラメ氏はレバノン生まれ。ベイルート・アメリカン大学で経済学を学んだ後、米金融機関メリルリンチで20年近く勤務し、国際的な金融経験を積んだ。その経歴を評価され、1993年に当時のハリリ首相により中銀総裁に任命された。
サラメ氏は1990年代の内戦終結後、レバノン経済の安定と通貨防衛を担う中心人物とされ、高金利政策や通貨のドル・ペッグ(固定相場制)を通じて投資を呼び込み、一定の金融安定を実現した。国際金融界でも評価され、一時はIMFや世界銀行と連携する姿勢も見せた。
しかし、2019年以降のレバノン経済危機が表面化すると、サラメ氏の政策とその責任が厳しく問われるようになった。銀行預金の引き出し制限、通貨価値の急落、生活費の高騰などが国民生活を直撃し、金融システムそのものが崩壊に近づいた。多くの国民が預金を失うなかで、中銀の運営責任者としてのサラメ氏に対する批判は急速に高まった。
さらにサラメ本人に対しては、汚職、資金洗浄、不正蓄財の疑惑が国内外で浮上した。欧州各国では、サラメ氏と家族が保有する数億ドル規模の資産が不正に国外へ移されていた可能性があるとして、捜査や口座凍結、レッドノーティス(国際手配)が実施された。米国やフランスなども制裁措置を発動し、名声は地に落ちた。
レバノン国内でも司法捜査が進み、2024年に逮捕・起訴され、裁判は現在も続いている。中銀を通じて関係企業に巨額の資金が不正に流れた疑いもあり、在任中に築かれた金融構造自体が不透明で非持続的だったとの批判も強い。
現地メディアによると、サラメ氏は拘禁中、何度も体調を崩し、ベイルート郊外の病院に入院していたという。
裁判所はサラメ氏に渡航禁止令を課し、パスポートを没収している。