ヒズボラの武装解除前進、レバノン首相が発表、イスラエルとの緊張高まる中
この停戦合意はイスラエルとヒズボラとの間で2023〜24年に激しい戦闘が続いた後に締結され、リタニ川以南の地域からヒズボラの武力を排除し、国家が武器を独占する体制を確立することを求める内容となっている。
のパトロール部隊(Getty-Images/AFP通信).jpg)
レバノンのサラム(Nawaf Salam)首相は20日、イスラエルとの停戦合意の重要条件となっている南レバノンのヒズボラ武装解除が、リタニ川以南で完了に近づいていると表明した。これは2024年11月に米国の仲介で成立した停戦合意の履行に向けた進展であり、年内の完了を目指す取り組みの一環だとしている。
この停戦合意はイスラエルとヒズボラとの間で2023〜24年に激しい戦闘が続いた後に締結され、リタニ川以南の地域からヒズボラの武力を排除し、国家が武器を独占する体制を確立することを求める内容となっている。
サラム氏は声明で、この計画の第一段階について「完了まで数日」との見通しを示し、リタニ川以北での武器回収を第二段階として進める準備が整っていると表明した。
政府は今年8月、正規軍に対し国家による武器独占体制確立の計画策定を指示し、同軍が中心となって進めてきた。この計画はリタニ川以南での武装解除を最優先とし、年末までの完了を期限としている。サラム氏は「リタニ川以南に関する武器統合計画の第一段階が完了に近い」とし、「国家はリタニ川以北での(武器の)押収に着手する用意がある」と述べた。
この発表はヒズボラとイスラエルの停戦監視委員会の協議を踏まえたものでもある。サラム氏はこの委員会のレバノン側の交渉責任者と会談し、停戦履行への取り組みを確認したとされる。
停戦合意以降、双方は停戦違反を互いに非難し合う場面もあり、イスラエルはレバノン軍によるヒズボラ武装解除努力への懐疑を示しつつ、ヒズボラ関連施設に対する空爆を続けている。
ヒズボラはシーア派を基盤とする武装組織で、国内のキリスト教徒やスンニ派の政治勢力、さらには米国やサウジアラビアからの圧力にもかかわらず、武装解除に抵抗する姿勢を維持している。ヒズボラはイスラエルが攻撃を続ける限り全面的な武装解除は誤りだと主張し、停戦条件の実効性にも疑問を投げかけてきた。
イスラエル政府は公にレバノン当局に停戦条件の履行を促し、「必要に応じて行動する」と警告している。ヒズボラの武装解除が年内に完了しない場合、軍事的な措置を取る可能性をほのめかしており、地域の緊張は依然として高いままである。
レバノン国内では武装解除を巡り意見が分かれており、政府側は国家の主権と治安強化を訴える一方、ヒズボラは自らを対イスラエル防衛の必要不可欠な勢力だと位置付けている。このため、武装解除プロセスは国内政治にも大きな影響を与えている。
専門家はヒズボラの武装解除が完了するかどうかが、イスラエルとレバノン双方、中東の安定にとって重大な指標になると指摘している。停戦合意の履行は地域の緊張緩和と恒久的な平和構築に向けた重要な一歩であり、レバノン政府と国際社会の取り組みが今後の展開を左右するとみられている。
