SHARE:

イスラエルの「入植」開発続く、集落が更地に ヨルダン川西岸地区

ヨルダン川西岸におけるユダヤ人の入植は、イスラエルとパレスチナの対立の中心的な争点の一つである。
2025年9月29日/パレスチナ自治区、ヨルダン川西岸地区、イスラエルの入植開発(ロイター通信)

イスラエルの占領下にあるパレスチナ・ヨルダン川西岸地区でユダヤ人入植地の開発が順調に進んでいる。

ロイター通信は2日、最新の土地開発で土地を追われたパレスチナ人の話しを引用し、「ブルドーザーが集落を更地にし、葬り去った」と報じた。

AP通信によると、開発業者の作業エリアとその周辺には武装した警備員が配置されている。

反イスラムと反パレスチナを推進するイスラエルの極右スモトリッチ(Bezalel Smotrich)財務相は8月、ヨルダン川西岸を分割し、東エルサレムから完全に切り離すという、長期にわたって議論されてきたE1入植計画に着手すると表明。国防省もこれを承認した。

イスラエルの重機は入植地向けの新たな道路を作るために土を掘り起こし、集落を破壊。パレスチナ人に退去を命じ、新たな障壁を作り出した。

西岸地区のパレスチナ人コミュニティを代表する議会議員はロイターの取材に対し、「イスラエルはパレスチナ人の土地利用を妨害しながら開発を強行している」と語った。

入植者の移動を容易にする新たな道路が一つ増えるごとに、その利用を禁じられているパレスチナ人たちは、近隣の町や職場、農地への移動が困難になる。

トランプ(Donald Trump)米大統領は先週、イスラエルによるヨルダン川西岸の併合を認めないと明言したが、イスラエルはどこ吹く風で開発を推進してきた。

ヨルダン川西岸におけるユダヤ人の入植は、イスラエルとパレスチナの対立の中心的な争点の一つである。

1967年の第三次中東戦争において、イスラエルはヨルダンからヨルダン川西岸地区を占領した。それ以降、イスラエル政府はこの地域にユダヤ人を移住させ、数多くの入植地を建設してきた。現在では、数十万人のユダヤ人が西岸地区に住んでおり、彼らの存在はパレスチナ人との土地や資源をめぐる対立を激化させている。

国際法の観点から見ると、これらの入植活動はジュネーブ条約に違反していると広く認識されている。同条約は、占領地への自国民の移住を禁じており、国連をはじめとする多くの国際機関や諸外国は、イスラエルの入植を違法とみなしている。しかし、イスラエル政府はこの立場に反論、歴史的・宗教的・安全保障上の理由から入植地の存在を正当化している。

入植地は多くの場合、戦略的に重要な丘陵地や交通の要所に建設され、軍の保護のもとで拡大されている。一部の入植地はイスラエル政府の公的な承認を受けていない「違法入植地」であるが、こうした地域も後に事実上の合法化が行われるケースがある。また、入植者とパレスチナ人との間では土地の占有、暴力事件、水資源の分配などをめぐる衝突が頻発しており、和平プロセスの妨げとなっている。

入植の進展は、二国家解決(イスラエルとパレスチナの共存)を困難にしている。入植によってパレスチナの領土が分断され、将来的なパレスチナ国家の形成が物理的に困難になるからである。そのため、パレスチナ側は入植活動の全面停止を和平交渉再開の前提条件としてきた。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします