◎ホワイトハウスによると、ジョー・バイデン大統領は19日朝にベンヤミン・ネタニヤフ首相と戦闘開始以来4回目となる電話会談を行い、停戦への期待を示したという。
2021年5月19日/イスラエル、首都テルアビブのハキリヤ軍事基地、ベンヤミン・ネタニヤフ首相(AP通信/Sebastian Scheiner/Pool)

5月19日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、パレスチナのガザ地区に対する空爆と砲撃を推し進め、ガザ地区を支配するイスラム過激派組織ハマスを打倒するまで攻撃を継続すると決心した。

ネタニヤフ首相の厳しいコメントは、先週の戦闘開始以来電話会談を重ねてきたアメリカとの亀裂を示すものであり、停戦に向けた国際社会の外交努力を複雑にする恐れがある。

ジョー・バイデン大統領は19日の声明でネタニヤフ首相に「エスカレーションの解除を期待している」と語った。しかし、ネタニヤフ首相はイスラエルのメディアに対し、「市民の平穏と安全が回復するまで、攻撃を続けると決心した」と述べ、アメリカの呼びかけに反対することを誓った。

アメリカはイスラエルの確固たる同盟国であり、昨日開催された国連安全保障理事会の第4回緊急会合でも共同声明に反対し、イスラエルの自衛権を擁護した。

イスラム過激派組織ハマスはイスラエル軍の激しい空爆にめげることなくロケット攻撃を継続している。AP通信によると、ガザ地区の死者は5月19日時点で子供64人と女性38人を含む227人に達し、1,600人以上が負傷したという。ハマスは上級司令官数十人の死亡を認め、他のジハード組織の幹部も数十人死亡したと伝えられているが、イスラエル軍は司令官を含む戦闘員を少なくとも130人殺したと主張している。イスラエルでは子供2人を含む12人の死亡が確認され、少なくとも50人が重軽傷を負った。

19日に軍本部を訪問したネタニヤフ首相は「バイデン大統領の支援」に感謝していると述べたが、イスラエルは平穏と安全を取り戻すまでハマスへの攻撃を続けると兵士たちに宣言した。「私は目的を達成するまで作戦を継続すると決心しました」

バイデン大統領はハマスを非難し、同盟国イスラエルに直接攻撃を停止するよう求めることを避けてきた。しかい、国際社会はアメリカのさらなる外交努力を期待しており、バイデン大統領により強力に介入するよう圧力をかけている。

匿名を条件にAP通信の取材に応じたエジプトの外交官は、「イスラエルの政府高官に停戦の申し出に応じるよう呼びかけており、返事を待っている」と述べた。一方、ドイツのハイコ・マース外相は、イスラエルとパレスチナの外相と会談するため、20日に現地入りすると述べた。

2021年5月19日/パレスチナ、ガザ地区、ハマスのロケット(AP通信/Hatem Moussa)
2021年5月18日/イスラエルとガザ地区の国境付近、イスラエル軍の砲兵部隊(AP通信/Tsafrir Abayov)

イスラエルの外務省は19日、スロバキアとチェコ共和国の外相が20日にイスラエルを訪問すると発表した。外務省当局者は声明の中で、「両国の外相はイスラエルに対する連帯と支援を表明するために現地入りする」と述べた。

イスラエル軍は19日の早い段階でガザ地区への空爆を強化し、ハマスの施設を爆撃した。現地メディアによると、19日の空爆で少なくとも9人が死亡したという。

今回の戦闘は、東エルサレムの聖なる丘の上に建設された施設でイスラエル警察とパレスチナ人の衝突が激化したことで引き起こされた。イスラエル警察は先月、ラマダンの開始に合わせてアル・ハラム・アル・シャリフ(高貴な聖域)と呼ばれるエリアを訪れたパレスチナ人を厳しく取り締まり、衝突に発展した。

その後、イスラエルの保守的な民族主義者は東エルサレム(旧市街と聖地の本拠地)を取り戻した戦争の勝利を例年以上に盛大に祝ったが、多くのパレスチナ人はこれを挑発と見なし、激怒した。それ以来、イスラエル軍はハマスのインフラや施設を標的にした空爆を継続している。ハマスはイスラエルの主要都市に向けて3,700発以上のロケットを発射した。

レバノンのイスラム過激派組織は19日、イスラエル北部に向けてロケットを発射し、新たな前線を開くとネタニヤフ首相に圧力をかけた。イスラエルは南レバノンへの砲撃でこれに応戦したが、現地メディアによると双方に負傷者は出ていないという。

イスラエルは2006年の戦争以来、レバノンの強力なイスラム過激派組織ヒズボラとの本格的な戦闘を避けている。19日のロケット攻撃は、南レバノンに拠点を置くヒズボラの関連組織もしくはパレスチナの派閥によるものと考えられているが、声明は出ていない。

イスラエルはヒズボラを最も危険な組織のひとつと見なしており、戦争が勃発した場合、経済危機で荒廃しているレバノンは焼け野原になる可能性がある。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領は19日朝にネタニヤフ首相と戦闘開始以来4回目となる電話会談を行い、停戦への期待を示したという。ホワイトハウスは声明の中で、「バイデン大統領は大幅なエスカレーションの解除を望んでいるとネタニヤフ首相に伝えた」と述べた。

国連のパレスチナ代表、リヤード・マンスール氏は、安保理が統一された立場を表明できないことを「恥」と呼んだ。アメリカはフランスが立ち上げた停戦を求める最新の決議案は、「エスカレーション解除の努力を弱体化させる可能性がある」と指摘し、却下した。

一方、米上院共和党員はイスラエルの空爆を擁護する決議案を議会に提出すると17日に発表した。共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首は同盟国イスラエルを非難している一部の民主党員を打ち負かし、「バイデン大統領は同盟国をテロリストの攻撃から守るために”一緒に立つ”と宣言しなければならない」と主張した。

トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は19日の演説で、「アメリカ人はユダヤ人のテロ攻撃を後押ししている」と述べた。「それがアメリカです。アメリカはテロリストユダヤ人をサポートし、エルサレムの強奪を推奨しました。それがアメリカの本質です」

イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)、およびゴラン高原を占領したが、国際社会はこれを認めていない。

聖地エルサレムを奪われた数百万人のパレスチナ人はガザ地区とヨルダン川西岸地区に押し込められ、みじめな生活を送っている。

2021年5月19日/パレスチナ、ガザ地区南部の町カーンユーニス(AP通信/Yousef Masoud)
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