◎ガザ地区の保健当局によると、パレスチナの死者は子供31人と女性20人を含む122人に達し、900人以上が負傷したという。
2021年5月14日/イスラム過激派組織ハマスのロケットを迎え撃つイスラエルのミサイル(ゲッティイメージズ/AFP通信)

現地メディアによると、ガザ地区を支配するイスラム過激派組織ハマスはイスラエルに向けてロケットを発射し続けており、戦闘が収束する見通しは全く立っていないという。

イスラエル軍は5月14日の声明で、空軍と陸軍による攻撃を継続したが、パレスチナにはまだ侵攻していないと述べた。

ガザ地区の保健当局によると、死者は子供31人と女性20人を含む122人に達し、900人以上が負傷したという。ハマスは上級司令官20人の死亡を認め、他のジハード組織の幹部も数十人死亡したと伝えられている。イスラエルでは6歳の子供と兵士1人を含む8人が死亡した。

ガザ地区の暴力はパレスチナ全域に波及している。

暴徒化した一部のパレスチナ人はヨルダン川西岸全域で激しい抗議活動を行い、少なくとも9つの町でイスラエル軍に石を投げ、タイヤを燃やした。地元メディアによると、この規模の抗議は2017年以来だという。

パレスチナの保健当局は抗議活動に参加した7人がイスラエル軍に射殺されたと述べた。そのうち1人は兵士を刺そうとしたため撃たれたという。

イスラエル軍は13日に予備兵9,000人を召集し、ガザ地区との国境付近に配備した兵力を増強した。軍のスポークスマンは記者団に対し、人口密集地域への地上攻撃の可能性に言及したが、具体的なスケジュールは示さなかった。

今回の戦闘は、東エルサレムの聖なる丘の上に建設された施設でイスラエル警察とパレスチナ人の衝突が激化したことで引き起こされた。イスラエル警察は先月、ラマダンの開始に合わせてアル・ハラム・アル・シャリフ(高貴な聖域)と呼ばれるエリアを訪れたパレスチナ人を厳しく取り締まり、衝突に発展した。

その後、イスラエルの保守的な民族主義者は東エルサレム(旧市街と聖地の本拠地)を取り戻した戦争の勝利を例年以上に盛大に祝ったが、多くのパレスチナ人はこれを挑発と見なし、激怒した。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)、およびゴラン高原を占領した。以来、ガザ地区とヨルダン川西岸地区に追いやられた数百万人のパレスチナ人はみじめな生活を送っている。

ベニー・ガンツ国防相は14日、400人以上の逮捕者を出した国内の混乱を抑えるために治安部隊を大幅に強化するよう命じた。イスラエルの警察当局者は地元メディアに対し、「イスラエル国内で生活しているアラブ人とユダヤ人のギャンググループが衝突している」と述べた。

2021年5月14日/イスラエルとガザ地区の国境付近(ロイター通信)
2021年5月14日/イスラエルとガザ地区の国境付近、イスラエル軍の戦車(AP通信/Khalil Hamra)

ガザ地区の住民たちはイスラエル軍の侵攻を恐れ、別の地域に避難した。シェジャイヤから避難した住民は現地メディアの取材に対し、「自宅は砲撃で破壊された」と述べた。「私たちの町は戦闘機と戦車の攻撃でバラバラになりました。目の前で爆発が起きた時は死んだと思いました」

イスラエル軍のジョナサン・コンリカス中佐は14日、「メトロ」と呼ばれるハマスのトンネルネットワークを破壊するための作戦を決行したと述べたが、トンネルを破壊できたかどうかは明らかにしなかった。「ガザ地区の地下に設置されたトンネルを破壊するために、空爆と戦車による砲撃を行いました。ハマスを含むテロリストたちは13日の夕方から14日早朝にかけて、220発のロケットをイスラエルに向けて発射しています...」

コンリカス中佐は、「軍の目標はテロリストとそれに関連する施設であり、民間人の死傷者は最小限に抑えられています」と強調した。「私たちはビルやその他の建物を攻撃する時は周辺住民に避難するよう促しています。しかし、ハマスは民間人を盾にしました」

ハマスは後退する兆候を見せておらず、これまでにイスラエルに向けて約1,800発のロケットを発射し、一部は首都テルアビブやエルサレムに着弾した。残りのほとんどはイスラエルのアイアンドームミサイル防衛システムに迎撃されている。

地元メディアによると、ハマスの軍事スポークスマンは地上侵攻を恐れておらず、イスラエル兵を捕縛し後悔させると述べたという。

イスラエル軍の空爆はエジプトの交渉担当者が停戦交渉のために現地入りして以来、大きな進展は見られなかった。エジプト、カタール、国連が停戦努力を主導している。

交渉に関与しているエジプトの諜報当局者はAP通信の取材に対し、「イスラエルはハマスを含む過激派との1年間の休戦提案を拒否した」と述べた。当局者によると、ハマスは提案を受け入れたという。「イスラエルは停戦を遅らせて、ハマスとイスラムジハード組織の力をさらに削ぎ落としたいと考えています」

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は声明で、ハマスは非常に高い代償を支払うことになると警告した。

一方、米ジョー・バイデン大統領はネタニヤフ首相と戦闘の沈静化について話し合い、ハマスの攻撃を非難したうえで、ネタニヤフ首相を支持したと述べた。ホワイトハウスによると、バイデン大統領はイスラエルの国民を守る正当な権利への揺るぎない支持を伝えたという。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、ガザ地区とイスラエルの戦闘を即時停止するよう求めた。しかし、ネタニヤフ首相の上級顧問は現地メディアの取材に対し、「国際的な停戦の呼びかけは見当違い」と述べた。「私たちはこの紛争を望んでいませんでした。しかし、敵は攻撃を仕掛けてきました。停戦はハマスを打倒するもしくは追放することで達成されます。私たちはハマス本体と指揮系統を破壊します」

イスラエルのルーベン・リブリン大統領はガザ地区の戦闘を「無意味な内戦」と呼び、ハマスを非難した。

ネタニヤフ首相は3月の議会選挙でどうにか勝利を収めたが、連立政権の発足に失敗し、野党の圧力に直面している。しかし、反対派のアラブ系政党の連立に向けた協議も、今回の衝突で暗礁に乗り上げたと伝えられている。

2021年5月14日/パレスチナ、ガザ地区の崩壊した建物と住民(AP通信/Khalil Hamra)
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