イスラエル軍、ガザ地区への空輸支援を再開、批判高まる中

ガザ紛争におけるパレスチナ側の死者は26日午前の時点で5万9704人、負傷者は14万3617人となっている。
2025年7月23日/パレスチナ自治区、ガザ地区南部の食料配給所(AP通信)

イスラエル軍は26日、パレスチナ・ガザ地区への空輸支援を再開したと発表した。

同軍は声明で、ガザ地区における人道危機を緩和するため、他の措置も講じていると述べた。

国連はイスラエルに国境封鎖を解放し、ありったけの食料、医薬品、燃料をガザに投入するよう求めている。

イスラエル軍は声明の中で、「国連の援助物資輸送隊が市民に援助を届けるための人道回廊を設置し、人口密集地域で人道停戦を実施する」と述べた。

しかし、イスラエル軍は26日も北部や中部の広い範囲で地上作戦を継続。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラによると、過去24時間で少なくとも30人が死亡したという。

イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦交渉は事実上破綻。停戦の見通しが立たない中、国際社会はイスラエルへの批判を強めている。

ガザの保健当局によると、23年10月に戦争が始まって以来、25日時点で少なくとも122人が餓死し、その大半が今年5月以降に確認されたという。122人のうち83人が子供であった。

イスラエル軍は声明で、「空輸は国際援助機関と調整して実施され、小麦粉、砂糖、缶詰食品などを地上に投下する」と述べた。

ロイター通信はパレスチナ側の情報筋の話しとして、「北部で援助物資の空輸が開始された」と報じた。

イスラエル外務省も声明を出し、「軍が27日朝に民間人居住地域と人道回廊において、一時的な人道停戦を実施する」と述べたが、その詳細は明らかにしなかった。

米国とイスラエルが運営するガザ人道財団(GHF)は5月27日に南部の複数のエリアで配給所の運営を開始。それ以来、配給所とその周辺で殺害された市民は1000人を超え、今も増え続けている。

イスラエルの国境封鎖により、食料、水、燃料、医薬品、その他物資の搬入が疎外され、餓死者が急増している。

国連を含む115の団体は今週、ガザの現状を「飢餓地獄」と評し、「壊滅的な大飢饉」が目の前に迫っていると警告した。

イスラエル政府はガザで餓死者が急増しているという国連などの警告を「偽情報」と呼び、「ハマス寄りの勢力がフェイクニュースを流してイスラエルを悪者にしようとしている」と主張している。

トランプ(Donald Trump)米大統領は今月初めにイスラエルが60日間の停戦に向けた条件に同意したと明らかにした。

イスラエルの政府高官は双方が60日間の停戦に合意した場合、イスラエルはその期間を利用して、「ハマスが武装解除することを条件とする恒久的な停戦」を提案する用意があるとしている。

イスラエル側は5月末にトランプ政権のウィトコフ(Steve Witkoff)中東担当特使が提示した停戦案を支持。ハマスは一部変更を求めていた。

ウィトコフ氏は▽60日間の停戦▽ハマスの人質56人(遺体含む)のうち28人の解放▽1200人以上のパレスチナ人受刑者の解放▽ガザ地区への人道支援物資の搬入などを提案していた。

トランプ氏はイスラエルが同意した停戦の条件を明らかにしておらず、ウィトコフ氏が示した案と同じかは不明である。

ハマスは過去の協議でも「恒久的な停戦」を求めてきた。

一方、ハマス壊滅を目指すイスラエルは「期間を定めた停戦」には応じる姿勢を示している。

ハマスの報道官はイスラエルとの停戦交渉について、「すべての人質(遺体含む)を解放し、恒久的な停戦合意を締結する用意があると繰り返し表明してきたが、イスラエルがこれを拒否している」と主張している。

カタールの衛星テレビ局アルジャジーラによると、60日間の停戦が成立した場合、ハマスは10人の人質と18人の遺体を段階的に返還することになる。

イスラエルはその見返りとして、国内の刑務所に拘留しているパレスチナ人を釈放する。

ガザ紛争におけるパレスチナ側の死者は26日午前の時点で5万9704人、負傷者は14万3617人となっている。

多くのボランティアが行方不明者を捜索している。建物の倒壊に巻き込まれるなどして行方不明になった市民は1万~1万4000人と推定されている。

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