◎イスラエルのアラブ人居住区は長年、差別、貧困、犯罪、暴力、政府の取り締まりや嫌がらせに苦しんできた。
イスラエルの警察当局は8日、北部のアラブ人居住区で何者かが銃を乱射し、5人を殺害したと発表した。
地元紙タイムズ・オブ・イスラエルなどによると、事件はナザレ近郊のアラブ人が多く暮らす町の洗車場で発生。男が銃を乱射し、逃走したという。
警察は声明で「パレスチナ系犯罪組織の抗争とみられる」と説明した。
洗車場の事件から数十分後、近くの町で別の銃撃事件が発生し、30歳の男性と3歳の女児が重傷を負った。
最初の事件で亡くなった5人と負傷者2人の身元は明らかにされていない。
イスラエルのアラブ人居住区は長年、差別、貧困、犯罪、暴力、政府の取り締まりや嫌がらせに苦しんできた。
反アラブ・反パレスチナを推進する超国家主義政党「ユダヤの家」のベン・グヴィル(Itamar Ben Gvir)治安相は昨年末の就任時、アラブ人居住区の犯罪も厳しく取り締まると約束した。
しかし、これらの地域での暴力は悪化の一途を辿り、今年に入ってから100人近くが死亡している。
ベン・グヴィル氏は8日の声明で、「長年の怠慢がイスラエルのアラブ人居住区を西部劇のような無法地帯に変えてしまった」と主張した。
またベン・グヴィル氏国家警察の人手不足を嘆き、「これからもパレスチナ人武装勢力を厳しく取り締まる」と約束。自身が提案している「国家警備隊」の速やかな設立を要請した。
この部隊は犯罪が多発するアラブ人居住区の取り締まりに重点を置くとしているが、詳細は不明である。
一部のアナリストはベン・グヴィル氏がこの部隊を使ってアラブ人居住区を弾圧すると懸念している。
ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は8日の事件にショックを受けていると表明し、パレスチナ人による殺人を阻止すると誓った。
アラブ系政党ラアム(統一アラブリスト)は声明で、「政府、特にベン・グヴィル氏が国内のパレスチナ人を死地に追いやっている」と非難した。
ヨルダン川西岸地区などで今年殺害されたパレスチナ人は120人近くに達し、その約半数が武装勢力に所属していない一般人とみられる。
ユダヤ人を狙ったパレスチナ人による攻撃では少なくとも21人が死亡している。