◎数カ月に及ぶウィーン・カタール交渉は成果を上げられずにいる。
イスラエルのラピド(Yair Lapid)首相は24日、バイデン(Joe Biden)米大統領と欧州の同盟国に対し、イラン核合意再開に向けた交渉から撤退するよう要請し、合意再開を致命的な間違いと指摘した。
ラピド氏は記者会見で、合意を「悪い取引」と呼び、バイデン氏は以前約束したレッドラインを守らなかったという見方を示した。「西側諸国はレッドラインを引き、イランはそれを無視しました。しかし、西側は今、レッドラインを引き直そうとしています...」
またラピド氏は進行中の交渉について、「バイデン氏が設定した基準、すなわちイランの核兵器保有を認めないという基準を満たさないことは明らかだ」と警告した。
米国とイランが新たな合意に達することができるかどうかは依然として不透明である。
バイデン政権は近いうちにイランの最新の申し出に対する回答を発表する予定だ。イランの宿敵イスラエルはそれを阻止するために奮闘している。
国連の専門家や西側情報機関はイランが2003年まで組織的な軍事核開発プログラムを行ってきたと報告しているが、イランはそれを平和目的のためと主張している。
イランは濃縮度60%のウラン生産をすでに開始しており、兵器級の90%以上を生産する技術を持っているとみられる。専門家によると、イランはまだ核爆弾製造とその運搬システムの設計を終えておらず、それを実現するには数カ月はかかるとみられるという。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用
イスラエルは数十年前に核兵器を取得したと広く信じられているが、肯定も否定もしていない。
数カ月に及ぶウィーン・カタール交渉は成果を上げられずにいる。イランは最近、米国は合意を意図的に先延ばししていると主張した。
国営イラン通信(IRNA)は24日、外務省報道官の話を引用し、「欧州の提案に対する米国の反応を踏まえ、欧州に独自の回答を提出する」と報じた。詳細は不明。
一方、ラピド氏は記者団に対し、「合意が結ばれれば、イランは数十億ドルの外国資金を隣国レバノンのテロ組織ヒズボラや、イスラエルを脅かす武装勢力のために使用するだろう」と警告した。
米国は2018年のイラン核合意離脱後、イランの外国資産を凍結し、イランの原油、天然ガス、石油化学製品などに対する投資を禁止した。
ラピド氏は外国資産を含むイランの資金がイラン革命防衛隊(IRGC)を強化し、中東の米軍基地を脅威にさらし、ヒズボラ、ハマス、イスラム聖戦、フーシ派を勢いづかせると指摘した。
イスラエル公共放送KANは24日、ラピド氏の声明を引用し、「EUはイランの要求に屈している」と報じた。「イランは圧力をかけ、EUの交渉担当者はまたしても譲歩するつもりだ...」
ラピド氏は先月、バイデン氏がイスラエルを訪問した際、米国とイスラエルの同盟関係より重要なものはないと注意を促していた。
イスラエルの国家安全保障顧問は今週、バイデン政権幹部との会談のためにワシントンD.C.に滞在している。報道によると、イスラエルのガンツ(Benny Gantz)国防相は25日に米国入りし、米軍中央司令部のトップおよびサリバン(Jake Sullivan)大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と会談する予定だという。
ラピド氏は11月1日の総選挙までイスラエルの暫定首相を務め、ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)前首相らと政権を争うことになる。
イスラエルはこの地域のライバルであるイランの核武装を許さず、西側の同盟国に核合意に拘束されないよう強く求めてきた。
ラピド氏は記者団に、「我々は過激で暴力的なイスラム主義政権の核の脅威を抱えて生きるつもりはない」と語った。「そのような事態にはなりません。なぜなら、我々がそれを許さないからです」