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イスラエル軍兵士の間でPTSDと自殺が急増 ガザ紛争

これは2023年10月7日のハマスによる襲撃を発端とする戦争が2年以上続く中での動きであり、複数の前線で兵士の精神的負担が増大している実態が浮き彫りになっている。
2023年12月15日/パレスチナ自治区、ガザ地区、ハマスのトンネルを進むイスラエル兵(Ariel Schalit/AP通信)

イスラエル軍兵士の間で心的外傷後ストレス障害(PTSD)や自殺未遂の急増が相次ぎ、ガザ紛争の影響が深刻化していることが、国防省や医療提供者の最新報告で明らかになった。これは2023年10月7日のハマスによる襲撃を発端とする戦争が2年以上続く中での動きであり、複数の前線で兵士の精神的負担が増大している実態が浮き彫りになっている。

報告によると、国防省はPTSDの診断件数が2023年以降で約40%増加したと指摘。この傾向は今後も継続すると予測している。2028年までには現状比で180%の増加も見込まれるという。戦闘や事故、爆発への恐怖体験のほか、民間人の死傷を目撃したり関与したりしたことによる“モラルインジャリー(道徳的傷害)”が精神健康状況を悪化させていると専門家は指摘する。

国防省の統計では、戦闘で負傷した兵士約2万2300人のうち約60%がPTSDなどの戦争関連の心的外傷を抱えているとされる。イスラエルの大手医療機関マカビがまとめた2025年の報告では、同医療圏内の軍関係者のうち約39%が精神的支援を求め、26%が抑うつ症状を訴えたという。

こうした背景には、治療へのアクセスの遅れもある。兵士が国の支援を受けるには国防省の評価委員会の審査を受けなければならず、認定まで数カ月かかる場合があり、その過程で必要なケアが得られない事例も報告されている。治療へのハードルが精神的苦痛を放置させ、自殺や自傷行為のリスクを高めているとの懸念が示されている。実際に、イスラエル議会の委員会報告では、2024年1月から2025年7月までに279件の自殺未遂が確認され、その大半が最前線の戦闘部隊に所属する兵士であった。

精神科医や治療現場では、戦闘体験によるPTSDに加えて心理的な“モラルインジャリー”が症状を複雑化させていると説明される。専門家は、兵士が「殺されるかもしれない」という極限状態に置かれ続ける恐怖と、戦闘中に民間人を誤って傷つけたという自己の行為への後悔が、精神的負担を増幅させていると指摘する。

また、この戦争はイスラエル国内だけでなく、ガザ地区やレバノンでも多大な人的被害を生んでいる。ガザでは住民約200万人が適切な住居や食料、医療サービスを欠き、パレスチナの精神衛生専門家は子どもたちの間でも深刻なトラウマ症状が広がっていると警鐘を鳴らす。

イスラエル軍はガザやレバノン南部、シリア南部など複数の戦線で兵力を展開し続けており、イランとの緊張も高まっている。これらの複合的な安全保障上の問題が、兵士たちの精神的負担を長期化させている。専門家らは、兵士のメンタルヘルス対策の強化と迅速な治療アクセスの改善が急務だと訴えている。

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