◎エジプトの交渉筋はロイター通信の取材に対し、「双方は調停者の仲介を受けて停戦に原則的に合意したが、交渉は続いている」と述べた。
2021年5月20日/パレスチナ、ガザ地区、ハマスのロケット弾(AP通信/Hatem Moussa)

※イスラエルの緊急閣議は停戦協定を承認した。(AP通信

地元メディアによると、イスラエルとガザ地区を支配するイスラム過激派組織ハマスは停戦に向けて水面下の交渉を続けているという。

地元メディアは、「イスラエル軍はエジプトの調停者に軍事行動の終了に同意すると通知した」と報じた。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は20日、安全保障に関する緊急閣議を招集した。現地メディアは停戦に向けた話し合いを行っている兆候が見られると報じた。

AP通信の取材に応じたエジプト政府の当局者は、「アブデル・ファッタ・エルシシ大統領(エジプト)とジョー・バイデン大統領はガザ地区の暴力を阻止する方法について話し合った」と述べた。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は停戦に向けた動きが加速していることについて、「励みになる」と記者団に語った。

AP通信の取材に応じた外交官によると、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は国連中東特使にカタールの当局者の交渉をサポートするよう指示したという。石油資源に恵まれているカタールはイスラエルとハマスの仲介を支援した実績が複数回あり、近年ではガザ地区の開発と人道的プロジェクトに数億ドルを寄付している。

レバノンに本拠を置くハマスの最高幹部、オサム・ハムダン氏も停戦を期待しているとソーシャルメディアに投稿した。

バイデン大統領は19日に行われたネタニヤフ首相との4回目の電話会談の中で「停戦を期待している」と圧力をかけた。ネタニヤフ首相は電話会談後に空爆を行い、バイデン大統領の要求を押し返したように見えたが、地元メディアによると、停戦協定は21日の早い段階で発効する可能性が高いという。

2021年5月20日/イスラエル、南部アシュケロンの避難所(AP通信/John Minchillo)
2021年5月20日/パレスチナ、ガザ地区への空爆は続いている(EPA通信)

停戦協定が期待されているにもかかわらず、双方は20日の夕方まで戦闘を続けた。ハマスはイスラエルの都市に向けて数百発のロケット弾を発射し、軍はハマスの拠点と思われる施設を空爆した。

地元メディアによると、ハマスの高官はイスラエルとの停戦協定は「1日か2日」になると予想していると述べたという。

AP通信によると、ガザ地区の死者は5月20日時点で子供65人と女性39人を含む232人に達し、1,700人以上が負傷したという。ハマスは上級司令官数十人の死亡を認め、他のジハード組織の幹部も数十人死亡したと伝えられているが、イスラエル軍は司令官を含む戦闘員を150人以上殺害したと主張している。イスラエルでは子供2人を含む12人の死亡が確認され、数十人が重軽傷を負った。

人権団体セーブ・ザ・チルドレンによると、イスラエル軍の空爆でパレスチナ自治区内の50以上の学校が被害を受け、少なくとも6校が完全に崩壊したという。対象の学校に通う約42,000人の生徒は自宅もしくは避難所にとどまっている。

世界保健機関(WHO)は20日、イスラエル軍の攻撃で少なくとも18の病院と複数の診療所が被害を受けた述べた。当局者によると、必須医薬品が不足しており、可及的速やかに支援を開始する必要があるという。

エジプトの交渉筋はロイター通信の取材に対し、「双方は調停者の仲介を受けて停戦に原則的に合意したが、交渉は続いている」と述べた。しかし、イスラエルのエル・コーヘン諜報大臣は公共放送KANのインタビューの中で停戦の噂を却下し、「目標を達成することが最重要課題であり、達成したと判断するまで作戦は続く」と述べた。

国連安全保障理事会は19日に停戦を求める声明に投票したが、アメリカに却下された。

イスラエル・ガザ紛争のタイムライン

・4月13日:イスラエル警察とパレスチナ人が東エルサレムで衝突。パレスチナ人はイスラム教の聖なる月の最初の夜に東エルサレムのアル=アクサー・モスクで祈りを捧げる予定だった。

・4月15日:ハマスがイスラエルに向けてロケットを発射。

・4月19日:イスラエルの港湾都市ヤッファでアラブ人とユダヤ人が衝突。

・4月20日:ユダヤ人のギャングが、TikTokで共有された正統派ユダヤ人に対する偏見に腹を立て、アラブ人への攻撃を呼びかける。その後、ギャングとアラブ人は小競り合いを演じた。

・4月23日:保守的な数百人のユダヤ人が「アラブ人に死を」と叫びながらダマスカス門に向けて行進を行う。アラブ人は激しく反発し、衝突に発展した。

・4月24日:ガザ地区からロケットが発射される。イスラエル軍は空爆で応戦した。

・5月2日:ハマスがアラブ人に「人間の盾」を形成するよう呼びかける。

・5月4日:ガザ地区のイスラム過激派組織がイスラエルで焼夷弾攻撃を決行。各地で火災が発生した。

・5月7日:ヨルダン川西岸でイスラエル警察とパレスチナ人が衝突。パレスチナ人2人が射殺され、1人が負傷した。

・5月8日:東エルサレム周辺でイスラエル警察とアラブ人が衝突。

・5月10日:アラブ人がイスラエル警察に対する投石攻撃を本格化させる。この日の衝突でアラブ人300人以上が負傷した。

・5月10日:ハマスがイスラエル南部へのロケット攻撃を開始。ネタニヤフ首相は声明で、「敵はレッドラインを越えた」と述べ、空爆開始を宣言した。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)、およびゴラン高原を占領したが、国際社会はこれを認めていない。

聖地エルサレムを奪われた数百万人のパレスチナ人はガザ地区とヨルダン川西岸地区に押し込められ、みじめな生活を送っている。

2021年5月20日/イスラエルとガザ地区の国境付近、身を隠すイスラエル兵(AP通信/Tsafrir Abayov)

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