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イスラエル首相、シリアとの和平合意に期待「緩衝地帯が必要」

イスラエルは昨年12月にアサド前大統領が失脚して以降、シリア南部で地上・空中作戦を何度も実施してきた。
イスラエルとシリアの緩衝地帯、ゴラン高原近く(AP通信)

イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は2日、隣国シリアとの和平合意の可能性について言及し、合意の前提条件として「首都ダマスカスからヘルモン山に至る非武装の緩衝地帯」の設置を強く求める考えを改めて示した。

トランプ(Donald Trump)米大統領は前日、シリアとイスラエルの「強く真摯な対話」の重要性を強調し、両国間の非侵略協定を仲介する意向を示していた。

ネタニヤフ氏は声明で、「我々が保持している地域は、イスラエル市民の安全を守るために必要だ」と述べ、「こうした原則を理解し、好意をもって臨めば、シリアとの合意は可能だ。ただし原則を曲げることはない」と主張した。

イスラエルは昨年12月にアサド(Bashar Assad)前大統領が失脚して以降、シリア南部で地上・空中作戦を何度も実施してきた。かつて国連によって管理されていた「1974年の停戦協定下の緩衝地帯」を越えて南部に進出し、襲撃と空爆を繰り返している。

シリアは公式にはイスラエルを承認しておらず、イスラエルは1967年の中東戦争でシリア領土のゴラン高原を占領、その後1974年の協定(停戦調停)で設定された非武装地帯(DMZ)を事実上覆し、昨年12月以降、さらにシリア領域の占拠エリアを拡大してきた。

こうした占領・緩衝地帯設定は1974年の協定を破棄する行為とみなされてきたが、イスラエルにとっては、「新たな脅威が台頭する中で国境地帯の安全を確保するための必要不可欠な措置」と位置づけられてきた。

ただし、交渉が進んでいるとはいえ、当事国間には依然として大きな溝がある。特に、シリア側がイスラエルの占領を受け入れるかは極めて不透明だ。さらに、先週、イスラエル軍が南シリアで実施した空爆および地上作戦では少なくとも13人が死亡しており、これが和平交渉に影を落としている。

一方で、米国はシリアのシャラア暫定政権を支持し、シリア安定化とイスラエルとの平和関係の樹立を促進する姿勢を示している。だが、イスラエル側はシャラア(Ahmed al-Sharaa)大統領の過去のイスラム過激派との関係を問題視しており、完全な信頼構築には至っていない。

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