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イスラエル首相、レバノン南部での作戦拡大命じる、対ヒズボラ戦


ヒズボラは1980年代からレバノン南部を拠点とし、イスラエルと長年対峙してきた。
2026年3月29日/レバノン南部のイスラエル国境近く、イスラエル軍の空爆を受けた地区(ロイター通信)

イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は29日、レバノン南部を中心に進めている軍事作戦の範囲を拡大するよう関係閣僚に命じたと発表した。これは親イラン武装組織ヒズボラによるロケット弾攻撃がイスラエル北部国境で続いていることを受けた措置であり、「緩衝地帯(バッファーゾーン)」を拡大・強化する狙いがあるとしている。今回の作戦強化はイスラエル側の既存の防衛線を越えて、場合によってはリタニ川まで達する可能性があるとみられている。

ネタニヤフ氏の発表は、これまで実施してきた地上および空中作戦の延長線上にあるもので、ヒズボラが依然としてイスラエル北部に対してロケット弾や無人機(ドローン)を発射し続けている現状を変える必要があるとの認識に基づいている。イスラエル首相府は声明で、現在の軍事行動はヒズボラによる脅威を根絶し、北部住民の安全を確保するためのものであり、ヒズボラが保有する多数のミサイルや攻撃能力の無力化を目指すと説明した。

現地ではイスラエル軍がレバノン南部で地上作戦を展開し、砲撃や空爆を含む軍事行動を続けてきた。交戦は2月末に米国とイスラエルによるイランへの空爆が行われた後に激化し、ヒズボラがこれに反応してロケット弾攻撃を活発化させたものである。また、戦闘は国境地帯だけにとどまらず、両側の民間人や救助要員を巻き込んだ衝突も報告されている。

イスラエル軍の軍事計画の詳細は公表されていないものの、レバノン側にさらに越境し、安全地帯を拡大することを目指している。イスラエル当局はヒズボラの攻撃能力が依然として高いと評価しており、これを抑えるためにより深くレバノン領内に進出する必要があると主張している。ネタニヤフ氏は、「軍の撤退はヒズボラが弱体化するまで行わない」と述べている。

一方で、軍事作戦の拡大はレバノン政府や国際社会から強い反発を招いている。アウン(Joseph Aoun)大統領はイスラエルの行動が主権の侵害であり国際法に抵触すると非難している。国連や一部の欧州諸国も戦闘激化を懸念し、即時の停戦と外交的解決の必要性を訴えている。地域の安全保障環境が一段と不安定化する中、国際社会は衝突の拡大を防ぐための圧力を強める動きが見られる。

ヒズボラは1980年代からレバノン南部を拠点とし、イスラエルと長年対峙してきた。2006年には大規模な戦闘が発生し、その後国連安全保障理事会決議1701によって停戦が成立したが、以降も断続的な衝突が続いている。決議はヒズボラの武装解除と南レバノンからの撤退を求めているが、同組織は依然として軍事能力を保持し、国境付近での緊張が継続している。

イスラエル国内では北部地域の住民がヒズボラの攻撃を受け続けてきたことへの不満と不安が高まっている。避難命令が出される地域もあり、生活への影響が深刻化しているとの報告もある。一方で、軍事拡大に対する内部の意見は分かれており、一部からは戦線拡大のリスクを懸念する声もある。これまでの戦闘で多数の戦闘員や民間人が犠牲となり、地域全体の人道的状況の悪化が懸念される。

イスラエルとヒズボラによる国境紛争は拡大しつつあり、米国やイランなど地域外の大国が関与する複雑な戦略的対立の様相を呈している。イスラエル政府は安全保障上の理由を強調するが、軍事拡大によって地域の緊張がさらに高まる可能性があるとして、国際社会の懸念が強まっている。

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