イスラエル政府、エジプト向け天然ガス供給契約を承認、5.4兆円規模
この天然ガス供給契約は2025年8月に当事者間で署名されていたが、詳細条件を巡る協議が続いていたため承認が遅れていた。
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イスラエル政府は17日、エジプト向けの天然ガス供給契約を正式に承認したと明らかにした。この契約はイスラエルの歴史上最大規模のガス取引となるもので、約1120億シェケル(約5.4兆円)規模となる。
ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は声明の中で「本日、我が国史上最大のガス取引を承認した」と述べ、米エネルギー大手シェブロンとイスラエルのパートナー企業が供給を担うと説明した。
この天然ガス供給契約は2025年8月に当事者間で署名されていたが、詳細条件を巡る協議が続いていたため承認が遅れていた。イスラエルは地中海東部の大規模ガス田から天然ガスを供給し、エジプトがこれを受け取る形となる。ネタニヤフ氏は今回の承認に際し、この取引が地域の安定化にも寄与すると強調した。
イスラエル側では、同国が天然ガス生産国として国際的な存在感を強めていることが背景にある。近年、イスラエルは海洋油田などの開発を進め、エネルギーの純輸出国となった。この流れの中で、エジプトへのガス輸出はイスラエル経済への重要な収入源となる見込みであり、政府は中長期的な経済効果に期待を寄せている。
一方、エジプトは自国の天然ガス生産量が2022年以降減少傾向にあり、エネルギー供給の安定化と輸入コストの低減が急務となっている。エジプト政府はこれまで輸入液化天然ガス(LNG)に大きく依存してきたが、イスラエルからのガス輸入はその負担軽減につながると見られている。また、エジプトは地域のエネルギーハブ化を目指してきたが、自国資源の不足からこの戦略が停滞していた経緯がある。今回の供給契約はその目標達成に向けた一歩と捉えられている。
契約承認を受けて、イスラエル国内では一部から慎重な意見も出ている。供給量や価格、インフラ整備計画が国内市場や消費者にどのような影響を与えるかについて議論が続いており、特にエネルギー規制当局や政治勢力の間で意見の違いが見られる。またエジプト側からの公式なコメントは発表されていないが、同国がエネルギー供給網の多角化を進める中で今回の合意は大きな意義を持つとして期待されている。
この天然ガス取引はイスラエルとエジプトの経済関係を深化させる可能性があり、地域のエネルギー協力や地政学的な連携の強化につながると見られている。ただし、中東の政治・安全保障環境は依然として不安定であり、今後の実施過程で新たな調整が必要になる可能性もある。
