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ISIS攻撃が米シリア安全保障協力に影響の可能性 分析

シリア暫定政権は11月に米国主導の対ISIS連合に加盟、両国の情報共有や対テロ作戦の協調は進展している。
シリア、イスラム国との戦闘で荒廃した町と国旗(Getty Images)

12月13日、中央シリアのパルミラ付近で米軍とシリア治安部隊による合同巡回中に治安要員の1人が待ち伏せ攻撃を仕掛け、米兵2人と通訳1人が死亡、数人が負傷した事件は、米国とシリア政府の対ISIS(イスラム国)協力関係に不安をもたらす可能性があると専門家は分析している。この攻撃はISISの関与が指摘されており、両国間の安全保障協力の重要性と脆弱性を浮き彫りにした。

この事件後、米国とシリア政府は攻撃にISISが関与しているとの見解を示し、報復措置を約束した。シリア暫定政権は11月に米国主導の対ISIS連合に加盟、両国の情報共有や対テロ作戦の協調は進展している。専門家はシリア側が米国の情報を受けたことで複数の攻撃を阻止するなど協力の効果が見られると指摘する一方、今回のような内部からの攻撃は治安部隊の人員選別や監視体制の不備を露呈した可能性を指摘している。

国際安全保障の研究者らは、新政権下での治安部隊の急速な拡大と旧反体制派の統合が、効率的な人員審査の障害になっていると分析する。大量の新規採用と旧勢力の取り込みは、イスラム過激思想を持つ人物の混入を防ぐ体制構築に時間を要するという指摘がある。このため、同様の攻撃が続けば、米国のシリア政府への信頼が揺らぎ、協力関係に亀裂が生じる可能性がある。

ISIS自信はかつてのように大規模な領土支配はできないものの、現在は小細胞を通じてテロ活動を続け、シリアの不安定な治安状況を利用しようとしている。専門家は、ISISが地域の治安機関や外国勢力に対する攻撃を継続することで自身の存在感を維持しようとしていると述べ、同組織は国家転覆ではなく「混乱の創出」に重点を置いていると分析する。

一方で、米国はISISに対する圧力を強めており、攻撃後にはシリア国内の複数地点に対して大規模な空爆を実施するなど対抗措置を取っている。こうした軍事行動はISISのインフラや兵站網を破壊することを目指しているが、同組織は社会的混乱を利用して再編を図る可能性がある。

ISISによるこうした攻撃は、米軍や協力勢力が占有エリアや拘留施設、難民・元戦闘員収容キャンプでの監視任務を維持するうえで大きな課題となっている。特にシリア国内の複数の収容所には多数のISIS関連戦闘員や支持者が収容されており、これらの施設の管理は米国や連合軍、そして現地勢力との協力が不可欠である。

分析によると、短期的には米シリアの安全保障協力は継続する見通しだが、攻撃の再発や治安部隊内部の統制不全が重なれば、米側の協力度合いが変わる可能性も指摘される。専門家は、協力関係の維持には情報共有の強化と治安機関の能力向上が不可欠であり、ISISのような非国家主体による脅威に対処するには両国の信頼関係がより強固である必要があると結論付けている。

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