イラク当局、シリアでイスラム国(ISIS)の幹部殺害
この幹部とされる男はISISの対外作戦・保安責任者を務めていた。
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イラクの対テロ機関は19日、米国主導の部隊と連携してシリアで実施した治安作戦において、イスラム国(IS)の幹部1人を殺害したと明らかにした。
それによると、この幹部とされる男はISISの対外作戦・保安責任者を務めていた。
当局は声明で、「この男はレバノンにおけるイラン大使館爆破事件を含む複数国でのテロ攻撃を指揮し、欧州や米国で他のテロを計画していたが、これらは最終的に情報活動によって阻止された」と述べた。
米中央軍(CENTCOM)はシリア国内でISISを標的とする空爆を実施している。
CENTCOMは昨年12月のアサド政権崩壊以来、ISISがシリアで復活を図ろうとしていると警告している。
シリアのISISは21世紀初頭の中東情勢を大きく揺るがした存在である。その起源は2003年のイラク戦争後に遡る。米国によるサダム・フセイン政権討伐後、旧バース党関係者やイスラム過激派が「アルカイダ・イラク支部」として活動を開始。これが後に「イラク・イスラム国」を経て「イスラム国」と名乗る組織へと変貌する。シリアにおけるISISの台頭は、2011年に始まったシリア内戦と密接に関わっている。
ISISのシリアにおける存在は同国の内戦を一層複雑化させた。アサド政権にとっては、自らの正当性を強調する口実となり、ロシアやイランの軍事支援を受ける理由ともなった。一方、反体制派にとっては、ISISの台頭が国際社会からの支持を弱める要因となった。さらに、トルコはクルド人勢力の台頭を脅威視し、シリア北部に軍事介入を行ったため、ISIS出現後のシリアは多国間の思惑が絡み合う舞台となっている。
ISISはシリア内戦の混乱を利用して短期間で国家的支配を確立したが、国際社会の総力を挙げた軍事的・政治的圧力によって領土を失った。しかし、組織そのものは地下に潜伏し、思想はインターネットを介して拡散し続けている。シリアにおけるISISの経験は、単なるテロ組織の問題にとどまらず、「崩壊国家」と「宗教的過激主義」が結びついたときの危険性を示す象徴的事例といえる。