◎シーア派の有力聖職者ムクタダ・サドル師の支持者数百人は29日、首都バグダッドのグリーンゾーン内で治安部隊と衝突した。
イラクの議会議長は31日、2日前に政府庁舎で発生した流血事件の犠牲者少なくとも30人のために3日間喪に服すと発表した。
シーア派の有力聖職者ムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師の支持者数百人は29日、首都バグダッドのグリーンゾーン内で治安部隊と衝突した。
警察によると、これまでに少なくとも30人の死亡を確認し、400人以上が負傷した。治安部隊の兵士も死亡している。
デモ隊はサドル内閣の発足を要求している。
米国やイスラエルとの関係正常化に強く反対するサドル師の政党は昨年10月の議会選で第一党に躍り出たものの、連立政権の発足に失敗し、政治的行き詰まりを招いた。
サドル師は流血事件発生後、支持者に撤退を呼びかけ、混乱は何とか終息した。
米ホワイトハウスは31日、バイデン(Joe Biden)大統領がイラクのカディミ(Mustafa al-Kadhemi)首相と電話会談を行ったと発表した。
バイデン氏は犠牲者に哀悼の意を表したうえで、カディミ氏に支援を提供すると約束した。
しかし、サドル派とイランの支援を受ける政党の対立が決着する見通しは立っておらず、専門家はさらなる暴動に発展する恐れがあると懸念している。
両陣営間の緊張は日に日に高まっており、10カ月に及ぶ政治空白から抜け出すには総選挙以外ないように思える。
両陣営はサドル師の主要な要求である、「議会を解散し早期選挙を実施できる適切な法律を確立する」ことについて意見が分かれている。
サドル派の代表は31日、ツイッターに挑発的なコメントを投稿し、対立政党とイランを煽った。「イランはイラクでラクダを手なずけようとしています...」
サドル派はどちらかという穏健派であり、このような強い表現で相手を挑発することは珍しい。
対立政党は国会召集を求めているが、サドル派の支持者は先月、これを拒否し議会を襲撃・占領した。
一方、バグダッド市内ではイランの支援を受ける国家公認のシーア派民兵連合体「人民動員隊(Hashed al-Shaabi)」の戦闘員4人の合同葬儀が営まれた。
議会議長は事件で死亡した人のために3日間、国として喪に服すと発表した。
バグダッドの市民は夜間外出禁止令が解除されたことに安堵する一方、また同じような衝突が発生し、紛争に発展するのではないかと懸念している。