イラクとクルド政府、トルコ向け石油パイプライン再開で合意
この合意により、2023年3月以来停止していたクルド・トルコ間の日量約23万バレルの輸出が再開される見通しだ。
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イラク政府とクルド地域政府(KRG)が22日、石油会社とトルコ経由の原油輸出再開で合意に達した。現地メディアが報じた。
この合意により、2023年3月以来停止していたクルド・トルコ間の日量約23万バレルの輸出が再開される見通しだ。
ロイター通信は関係筋の話しとして、「23日にもパイプライン稼働に向けた技術的手続きを開始し、48時間以内に原油輸送が再開される見込みである」と報じた。
輸送再開には議会の承認が必要である。
イラク北部のクルド人自治区で活動する国際石油会社DNO(ノルウェー)とそのパートナーであるジェネル・エナジーはコメントを出していない。
ロイターによると、DNOは操業停止前の時点でKRGが負っていた約3億ドルの返済について、引き続き交渉を継続したい意向をKRG側に伝えたという。
KRGはイラク北部に存在するクルド人自治政府であり、首都はエルビルに置かれている。1991年の湾岸戦争後、イラク中北部に設置された「飛行禁止区域」の下で事実上の自治を獲得し、2005年に制定されたイラク新憲法によって公式に連邦制の一部として認められた。KRGは議会と行政府を持ち、大統領が行政の長として機能する仕組みを備える。
同政府の主要勢力はクルド民主党(KDP)とクルド愛国同盟(PUK)であり、両党の競合や協力によって政治が進められてきた。経済基盤は豊富な石油資源に依存しており、トルコ経由のパイプラインを通じた輸出が重要な収入源となっていた。一方で、石油収入をめぐって中央政府との対立が絶えず、予算配分や輸出権限を巡る争いが続いている。
またKRGはイスラム国(ISIS)掃討戦においてペシュメルガ部隊が大きな役割を果たしたことで国際的な評価を高めた。しかし独立志向は強いものの、2017年の独立住民投票は国際社会や周辺国の強い反発を受け、実現には至らなかった。現在のKRGは、イラク国内での高度な自治を維持しつつ、周辺国との関係や中央政府との権限争いの中で存続している。