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イラク政府「イランからのガス供給が再開される兆候ない」

電力省の報道官は記者団に対し、イラン側からガス供給再開に関する具体的な時期や条件を示す情報は届いていないと説明した。
イランの製油所(Getty Images)

イラク政府は10日、隣国イランからの天然ガス供給が近日中に再開される兆候はないと明らかにした。電力省の報道官は記者団に対し、イラン側からガス供給再開に関する具体的な時期や条件を示す情報は届いていないと説明した。この供給停止は冬季の気温低下に伴い、イラン自身が国内消費を優先してガスを使用していることが背景にあるという報告もある。

イランからのガス供給はこれまでイラクの電力システムにとって極めて重要で、国内電力需要の3割から4割を補っている。 イランからの供給が止まった結果、電力省は約4000〜4500メガワットの発電能力が失われ、全国規模で電力供給に重大な影響が出ていると説明している。これにより一部発電所が停止し、負荷分散(ロードシェディング)が実施されるなど、電力供給不足が深刻化している。

イラクは冬季に電力需要が増加するのに対し、国内での発電能力は十分とは言えない。イラク電力省によると、冬のピーク時の需要は約4万8000メガワットに達する一方、国内での発電能力は約2万7000メガワットにとどまり、その差を輸入によって補ってきた。イランからの天然ガスはこうした電力不足を埋めるための重要な輸入品となっているが、供給の不安定さが長期的な課題となっている。

イランとのガス供給関係は過去にも断続的に途絶し、技術的なトラブルや支払い問題、さらには米国の制裁下での支払いの制約が影響しているとの指摘もある。イランはしばしば国内の需要増加を理由に輸出ガスを削減しており、これが再三にわたる供給停止の一因となっている。制裁環境下での取引条件や支払い手続きの複雑さも、イラク側にとって安定供給の妨げとして作用しているとの見方が専門家の間で出ている。

イラク政府は長期的にはガスの安定供給を確保するため、イラン以外の供給先の模索や国内ガス生産の強化を図る方針を示している。2025年末には米国企業との間で液化天然ガス(LNG)関連のインフラ整備契約を締結し、国内需要を補うための浮体式LNG受入設備の建設を進める計画も発表された。このプロジェクトは湾岸の港湾都市を拠点とし、他国からのLNG輸入を可能にすることで供給多角化を図る狙いがある。

しかし、こうした取り組みの実現には時間がかかる見込みで、当面はイランからの供給停止が続く場合、全国的な停電や電力供給の不安定化がさらに進む可能性があると専門家は指摘する。電力インフラの脆弱性や輸入依存体制の見直しは、イラク国内の経済・社会情勢にも大きな影響を及ぼす恐れがある。

イラク当局は引き続きイラン側との交渉を続ける方針だが、現段階で具体的な進展は示されていない。国際社会やエネルギー市場も中東地域のガス供給の動向を注視しており、今後の展開が地域のエネルギー安全保障に影響を与え得る状況となっている。

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