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イラク北部ガス田への攻撃、捜査当局が逮捕状請求、クルド地域で大規模停電

11月26日夜、ガス田の貯蔵タンクを狙ったドローン攻撃により、施設内で火災が発生。これによりガス供給が停止し、クルド地域の広範囲で電力供給が断たれた。
イラク北部のガス田(Getty Images)

イラク北部クルド地域のガス田が攻撃を受けた事件について、イラク軍は3日、2機のドローンが攻撃を実行したと明らかにした。

この施設の運営主体はアラブ首長国連邦(UAE)の企業等によるコンソーシアム。地域の重要なエネルギー供給源の一つである。

11月26日夜、ガス田の貯蔵タンクを狙ったドローン攻撃により、施設内で火災が発生。これによりガス供給が停止し、クルド地域の広範囲で電力供給が断たれた。

報道によると、ガスの供給停止によって電力網の約80%が影響を受け、アルビルやスレイマニヤなどの主要都市で大規模な停電が発生した。

攻撃当初、責任を主張する組織は現れなかった。運営会社は11月30日に施設の操業を再開した。

この事件により、ガス田への攻撃が地域のエネルギー安全保障にとって大きな脅威であることが改めて浮き彫りになった。

イラク軍は3日、今回の攻撃が「2機のドローン」によって実行されたと発表。うち1機が施設を直接攻撃し、もう1機は敷地外に着陸したという。さらに、捜査当局が複数の逮捕状を請求したことも明らかにした。攻撃に関与した個人や組織名は公表されていない。

中央政府はガス田と周辺インフラの防衛強化に乗り出すと表明。具体的には、施設周辺への防空システムの配備を、クルド当局と協力して行うとしている。加えて、治安部隊の再配置や指揮権者の交代など、区域の司令体制の見直しも行われる予定だ。

この報告を受け、クルド自治政府は今回の攻撃を「卑劣かつ無差別なテロ行為」と非難。過去にもガス田がロケットやドローンによる攻撃の対象となっており、2024年4月には労働者4人が死亡する事件も発生した。

今回の攻撃はイラクとクルド地域が抱える「エネルギー施設の安全保障」と「政治的・治安上の不安定さ」の根深さを改めて示すものとなった。特に、供給停止を通じて一般住民の生活基盤が打撃を受けたこと、そして詳細不明のまま捜査が続くという不透明性は、地域の安定と国際投資の観点からも深刻な問題である。

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