SHARE:

イラク、クルド地域の国際企業に原油移送義務を課す

イラクはOPEC加盟国、原油輸出が経済の中心を占めており、クルド地域の輸出再開は国内外の市場供給に影響を与える可能性がある。
イラク、クルド地域の石油施設(ロイター通信)

イラクの国営石油販売機構(SOMO)は21日、北部クルド地域で操業する石油企業が今年9月に結んだ輸出に関する合意に基づき、同地域で生産した原油をイラク中央政府側に引き渡す義務があるとの見解を表明した。

これはノルウェーのDNOが同合意への参加を拒否し、クルド政府向けに直接販売を続ける意向を示したことを受けての声明である。

SOMOによると、同合意はイラク石油省、クルド政府の天然資源省、および生産企業との間で取り交わされたもので、原油輸出はトルコを経由するパイプラインを通じて中央政府の管理下で実施されることになっている。合意の条項に従い、地域内で生産された原油は地方で消費される分を除き、すべてSOMOに引き渡し、パイプライン輸出ルートへ回されるべきだと明記されている。SOMOはクルド側の天然資源省がこの合意の履行を改めて確認したと述べた。

DNOは9月に出した声明で、未払いの債務処理の明確化を求め、同合意への署名を保留したままクルド地域に対して直接販売を継続する考えを示していた。しかし、SOMO側はその立場に反論し、合意に基づく義務がすべての国際企業に適用されるとして、原油供給の責務を強調した形だ。

この合意は2023年3月以降停止していたクルド地域から中央政府経由でトルコへのパイプライン輸出を再開する枠組みの一部でもある。中央政府とクルド政府は9月に歴史的な合意に達し、日量約23万バレルとされる同地域の原油を中央政府の管轄で輸出することで合意した。これにより2年半以上止まっていたパイプラインの再稼働が見込まれ、中央政府はクルド政府および国際企業との協力体制を強化してきた。

この取り決めは長年続いてきた中央政府とクルド地域との間の石油収益分配や輸出権を巡る対立を緩和する狙いがある。過去にはクルド地域が中央政府の承認なしにトルコのパイプラインを通じて直接輸出を試みたことから、パイプラインが停止される事態となり、その後の仲裁裁判では中央政府の輸出権が認められた。

今回のSOMOの声明は国際企業が当初合意した条件に従って原油供給義務を履行すべきだとの立場を強調し、輸出再開の確実性を高めたい意図があるとみられる。一方で、クルド政府や企業側には未払い債務や収益配分の仕組みなど依然として解決すべき課題が残っている。このため、合意の完全な実行とパイプライン輸出の安定稼働には引き続き行政調整や交渉が必要とされる。

イラクはOPEC加盟国、原油輸出が経済の中心を占めており、クルド地域の輸出再開は国内外の市場供給に影響を与える可能性がある。中央政府は統一的な輸出管理による収益の公平な分配と輸出ルートの確保を優先し、地域内外の企業との関係を安定化させる方針を示している。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします