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イラン暴動、米スターリンクでネット遮断を回避する市民

今回の遮断は8日に始まり、固定回線やモバイルデータによるインターネット接続は通常の約1%まで低下していると分析される。
宇宙開発企業スペースXが提供する衛星インターネットサービス「スターリンク」のロゴとマスク氏(Getty Images)

イラン国内で全国規模のインターネット遮断が続く中、一部の市民が米宇宙開発企業スペースXが提供する衛星インターネットサービス「スターリンク」を利用し、通信を確保していることが複数の関係者への取材で明らかになった。遮断は政府が全国的な抗議行動への対応として実施したもので、通常の光ファイバーや携帯電話ネットワークは事実上使えなくなっているが、スターリンクは地上インフラを介さない衛星通信でアクセスを提供している。

ロイター通信の取材に応じた利用者の1人は、イラン西部の地域で数十人の知人がスターリンクを使っていると述べ、特に国境付近の都市や町では比較的通信が維持されていると語った。英団体ネットブロックスも、イラン国内でスターリンクへの接続が断続的ながら続いているとの報告を聞いているとし、「局所的ではあるが、依然として機能している」と述べた。

今回の遮断は8日に始まり、固定回線やモバイルデータによるインターネット接続は通常の約1%まで低下していると分析される。政府は抗議活動を「テロ行為」と位置づけ、体制の維持に必要な措置だとしているが、遮断により市民生活や経済活動への影響が深刻化している。

スターリンクはスペースXによるサービスで、数千機の低軌道衛星を通じて通信を提供する。イランでは同サービスの使用が禁止されており、衛星端末の輸入や運用には厳しい制裁が科される。しかし、イラン国内の一部ではスターリンク端末が違法に流通し、抗議運動や情報遮断を回避する手段として利用されてきた。2022年末の時点で約100台のスターリンク端末がイラン国内で稼働しているとの報告もあるが、その数は同国の人口規模に比べると限定的だ。

専門家によると、政府側は地上インフラだけでなく衛星通信への干渉も試みている可能性が指摘されている。特にGPS信号の妨害(ジャミング)により、スターリンク端末が衛星との通信を確立しにくくする方策が用いられているという分析も出ており、接続状況が全土で一様ではない理由の一つと見られている。

一方、米側ではトランプ(Donald Trump)大統領がイーロン・マスク(Elon Musk)氏と連絡を取り、イランのインターネット復旧に向けて協力を求める意向を示したとの報道もある。インターネット遮断が広範に及ぶ中、衛星通信技術が情報の自由な流れを保つ役割を果たす可能性が注目されているが、政府による通信統制と利用者側の抵抗との間で緊張が高まっている。

このような状況はウクライナやミャンマー、スーダンなど他の地域におけるインターネット遮断時のスターリンク活用例とも一致している。衛星インターネットが紛争や国内混乱の最中に重要な通信手段として浮上する一方で、各国政府がその利用を制限・妨害する動きも顕著になってきている。今後、イラン国内での通信手段と情報の自由確保を巡る攻防は、国内外での政治的な焦点となる可能性がある。

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