◎イラン核合意再開を目指す交渉は遅々として進まず、欧米諸国を悩ませている。
国営イラン通信(IRNA)は22日、首都テヘラン南方のフォルドゥにある地下核施設でウランを60%まで濃縮する作業が始まったと報じた。
IRNAは政府関係者の話を引用し、「高濃縮ウランの生産強化は国の核開発計画に大きな影響を与える」と報じている。
国際原子力機関(IAEA)も声明でフォルドゥの生産強化が事実であることを認めた。
またIAEAはイランがフォルドゥのウラン生産を大幅に拡大し、中部ナタンズでも2つ目の生産棟建設を計画していると指摘した。
2018年に破綻したイラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止しているが、イランは60%の高濃縮ウランを生産し続けている。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用
60%は兵器級への技術的な一歩手前である。西側の専門家によると、イランは少なくとも核爆弾1発を製造できる高濃縮ウランを保有しているという。
IRNAはフォルドゥで生産されているウランの量など、詳細は明らかにしなかった。
イラン核合意再開を目指すイギリス、フランス、ドイツは22日、共同声明でイラン政府を非難した。
3カ国は声明の中で、生産強化を「核不拡散への挑戦」と呼び、核拡散のリスクが高まっていると指摘した。
また3カ国は国際社会と協力してイランの継続的な挑発に対処する最善の方法について協議するとした。
イラン外務省の報道官は21日、IAEAが先週採択した決議を非難し、「対応する」と述べていた。
この決議はIAEA理事会が承認したもので、イラン国内の3つの未申告施設で見つかった人工ウラン粒子に関するIAEA調査への協力をイランに求めている。
IAEAは今月初め、イランが高濃縮ウランの備蓄をさらに増やしたとの見方を示していた。またIAEAは先週、イラン当局が核施設の査察や監視を拒否し続けていると批判した。
IAEAのグロッシ(Rafael Grossi)事務局長はイランが3つの未申告施設における人工ウラン粒子の調査を拒否していることに「深刻な懸念」を抱いている。
核合意再開を目指す交渉は遅々として進まず、欧米諸国を悩ませている。
IAEA職員がイランの核施設を監視できるようになってから約2年、監視装置が撤去されてから5カ月経過した。
トランプ(Donald Trump)前米大統領は2018年に核合意から離脱し、イランの外国資産を凍結したうえで、イランの原油、天然ガス、石油化学製品などに対する投資を禁止した。しかし、イランは制裁発動も原油を輸出し続けている。
中部ナタンズの核施設では高濃縮ウランの生産が続いているとみられる。イランは2019年に同施設での60%ウラン生産を開始した。
ナタンズは昨年、破壊工作の標的になった。イランはそれを「核テロ」と呼び、イスラエルの破壊工作であると主張した。