イラン大統領「国連制裁克服する」E3の圧力続く中
E3(フランス、ドイツ、イギリス)は欧米側が求める「核査察」と外交交渉の再開にイランが応じない場合、制裁を再開する可能性があると警告している。
.jpg)
イランのペゼシュキアン(Masoud Pezeshkian)大統領は20日、国連安全保障理事会が対イラン制裁の恒久的解除を見送ったことを受け、「制裁が再発動しても克服する」と表明した。
ペゼシュキアン氏は国営テレビの演説で、「スナップバック(制裁再開)で道を塞ぐ者もいるが、道を開き築くこともできると確信している」と語った。
E3(フランス、ドイツ、イギリス)は欧米側が求める「核査察」と外交交渉の再開にイランが応じない場合、制裁を再開する可能性があると警告している。
またE3はイラン核合意がほぼ機能不全に陥った現状を踏まえ、イラン側が要求に応じない場合、10月までに安保理で制裁の「即時発動」を促すとしている。
これは常任理事国の拒否権でも回避できないように設計されており、イランがE3の要求に応じなければ、10月にも発効する可能性がある。
ペゼシュキアン氏は「彼らは我々を止められない。ナタンツやフォルドゥ(核施設)を攻撃することはできても、ナタンツを建設・再建するのは人間だということを彼らは理解していない」と述べた。
安保理は19日、制裁再発動に向けた30日間の手続きを開始した。
ペゼシュキアン氏は「我々は状況を変える力を持っているため、過剰な要求に決して屈しない」と強調した。
イラン核合意(JCPOA)の再開協議が難航している理由は主に政治的不信と利害対立の深さにある。まず、米国とイランの相互不信が最大の障害となっている。2018年にトランプ政権が一方的に合意を離脱し、経済制裁を再開したことで、イランは米国の合意履行能力を信用していない。そのため、イランは再び合意に戻る条件として、米国が将来また離脱しないという法的保証を強く求めているが、米国側は国内政治の制約からそれに応じられない。
次に、制裁解除の範囲をめぐる対立がある。イランは石油輸出や金融取引を含む包括的な制裁解除を要求しているが、米国は核問題以外の制裁、特に人権侵害やミサイル開発、テロ支援に関連する制裁は維持する姿勢を取っている。この差異が妥協を難しくしている。
さらに、イランの核開発の進展も交渉を複雑にしている。イランは合意破綻後、ウラン濃縮度を大幅に引き上げ、先進型遠心分離機の使用も進めている。国際原子力機関(IAEA)の査察体制も制限されており、核合意再開に向けて「時計を巻き戻す」ことが事実上困難になっている。
また、地域情勢も影響している。イスラエルやサウジアラビアなどの中東諸国はイランの核能力拡大を強く警戒しており、米国に対して譲歩を控えるよう圧力をかけている。一方でイランはロシアや中国との関係を強化し、西側に依存しない戦略を模索しているため、妥協のインセンティブが弱まっている。
各国の国内政治も交渉を難しくしている。米国では議会や世論の反発を恐れてバイデン前政権が大胆な譲歩をできず、イランでも強硬派が政権を握り「米国に屈した」と受け取られる合意再開を避けたい意向が強い。このように相互不信、制裁解除の範囲、核開発の既成事実化、地域安全保障、国内政治という複数の要因が絡み合い、協議の進展を阻んでいる。