イラン軍、イスラエルに対する新たなミサイル攻撃開始

専門家によると、イスラエルの被害はイランとは比べ物にならないほど小さいものの、それでも、イエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラと衝突した時とは比較にならないほど大きな被害を受けているという。
2025年6月15日/イスラエル、テルアビブ近郊、イラン軍のミサイルが着弾した現場(AP通信)

イランが15日、イスラエルに対する新たなミサイル攻撃を開始し、最大都市テルアビブで少なくとも3人が死亡、北部の港湾都市ハイファでも被害が確認された。

イスラエル軍はこの数時間前にイランの首都テヘランを空爆。攻撃の応酬が続いている。

イラン政府は15日、SNSへの投稿で、「イスラエルによるこれまでの攻撃で224人が死亡、1257人が負傷した」と発表。死傷者の9割以上が一般市民と報告している。

イスラエル軍は12日夜、イランの核施設と軍事施設に対する攻撃を開始。戦闘機で100か所以上を攻撃した。

イランはこれに報復。テルアビブやエルサレムなどに約100発のミサイルを発射した。

イスラエル軍は先制攻撃に踏み切った理由について、▽イランが核兵器保有を推進していること▽数千発の弾道ミサイルを保持していること▽中東各地の代理勢力への武器と資金の提供を挙げ、これらの脅威を取り除くことと説明している。

国営イラン通信(IRNA)は国軍のバゲリ(Mohammad Bagheri)参謀総長や革命防衛隊(IRGC)のサラミ(Hossein Salami)司令官ら複数の高官ほか、元原子力庁長官や著名な核科学者6人が死亡したと報じている。

IRNAは15日、イスラエル軍の最新の空爆でIRGCの高官2人が死亡したと報じた。

イランのアラグチ(Abbas Araghchi)外相は15日、「イスラエルがイランへの攻撃を停止すれば、イランも反撃を停止する」と表明した。

専門家によると、イスラエルの被害はイランとは比べ物にならないほど小さいものの、それでも、イエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラと衝突した時とは比較にならないほど大きな被害を受けているという。

トランプ(Donald Trump)米大統領は15日、この紛争が終結することを期待していると述べる一方、「米国はイスラエルへの支援を継続する」と強調した。

イスラエル公共放送KANは15日、イランのミサイル攻撃による、北部ハイファで少なくとも2人が軽傷を負い、3人が行方不明になっていると報じた。

またKANはハイファ港近郊の発電所で火災が発生したと報じている。

イスラエルのサール(Gideon Saar)外相は15日、イスラエルがイラン政府の転覆を目指しているという報道を否定した。

サール氏は米CNNニュースのインタビューで、「最高指導者ハメネイ(Ali Khamenei)師は標的になり得るか」という質問に対し、「指導部の打倒は目指していない」と答えた。

一方、イランのナタンツ核施設の被害の程度や、どの部分が攻撃を受けたかはいまだに明らかになっていない。

同施設の地下には広大なウラン濃縮プラントがある。一部の専門家は米国製の地中貫通型爆弾(バンカーバスター)が使われた可能性があると指摘しているが詳細は不明だ。

イランは5月時点で60%の濃縮ウランを408.6キログラム保有している。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用

これは兵器級に迫る水準だが、ナタンツの生産量は軍事専門家が破壊困難と指摘する山中に造られたフォルドゥ核施設より少ない。

イスラエル政府は諜報機関がイランが数日以内に複数の核弾頭を生産するのに十分な濃縮ウランを保有していることを確認したとしている。

イランは長い間、核兵器開発を否定してきた。しかし、イランはウラン濃縮を加速させ、兵器級とされる90%に近い60%の濃縮を続けている。

トランプ政権は今年、1期目を通じて実践してきたイランに対する厳しい経済制裁を再開する大統領令に署名。イランの主要収入源である石油産業を標的とする制裁措置が発動した。

イランは平和利用であることを理由にトランプ政権の要求を拒否し、制裁を解除するよう求めている。

トランプ氏は最初の任期中、厳しい制裁を科し、イランの石油輸出をほぼゼロに追いやった。イランはバイデン政権下で制裁逃れに成功、輸出量は増加した。トランプ氏はこれを再びゼロにするつもりでいる。

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