◎死者はさらに増えると見込まれている。
イラン南西部フゼスタン州アバダンで建設中の10階建て商業ビルの一部が崩壊し、少なくとも14人の死亡が確認された。
州当局によると、数十人ががれきの下敷きになった可能性があるという。死者はさらに増えると見込まれている。地元メディアはビルの所有者も死亡したと伝えている。
また州司法当局は市長を含む少なくとも10人が事故の責任を問われ逮捕されたと発表した。
国営テレビが23日に報じた映像には、崩壊したビル周辺から砂ぼこりが上がる様子が映っていた。報道によると、この商業施設は2棟構成で、1棟の建設はほぼ完了、もう1棟は工事中だった。最下層の商業フロアにはテナントも入っていた。
政府の緊急事態管理官は24日、国営テレビのインタビューの中で、「崩壊時、ビル内には約50人がいた可能性がある」と述べた。当局は23日に負傷者39人を確認し、そのほとんどが軽症だったと報告している。
ビルの崩壊部分には鉄筋が垂れ下がり、地上にはコンクリート片がグチャグチャに積み重なっている。
救助隊はバックホウでコンクリ片を除去し、大きな塊は大型クレーンで吊り上げていた。
ソーシャルメディアには崩壊後まもなく現場を視察したアバダン市長が怒り狂った群衆に追い掛け回され、殴打される様子が映っていた。
国営テレビは24日、市長と元市長2人を含む10人が逮捕されたと報じた。報道によると、当局はビルの所有者とゼネコン関係者も逮捕したと発表したが、司法当局はその後、この2人は崩壊に巻き込まれ死亡したと訂正している。
10人が逮捕された理由は明らかにされていない。
ライシ(Ebrahim Raisi)大統領は犠牲者に哀悼の意を表し、司法と自治体に事件の真相を解明するよう求めた。
国営テレビは政府高官のコメントを引用し、「イラン議会は事故調査委員会を設置し、調査に乗り出した」と報じている。
一方、アバダンで活動するあるジャーナリストは昨年からこのビルの建設に懸念を示し、第1ビルの床が陥没しているように見える画像を公表していたと伝えられている。このジャーナリストは建設許可プロセスで収賄があったと指摘しているが事実か否かは不明である。
国営イラン通信(IRNA)は24日、イラン建設技術者連盟の顧問の発言を引用し、「現場の安全対策は間違いなく遵守されていた」と報じた。
アバダンは1900年代初頭の開発地の中心となり、当時世界最大の石油精製所を建設した。
1980年代のイラン・イラク戦争でアバダンと周辺地域は破壊され、それ以来、国と民間の建設プロジェクトで再建が進められていた。
今回の事故は26人が犠牲になった15階建てビル「プラスコ」の火災崩壊事故(2017年)を思い起こさせた。
1978年にアバダンの映画館シネマレックスで発生した放火事件では数百人が死亡した。この火災は国民の怒りを引き起こし、地域全体の不安に発展。イスラム革命によるパーレビ(Mohammed Reza Pahlavi)国王の失脚につながった。