イランの高濃縮ウラン貯蔵量が2倍に、国際原子力機関が懸念表明

イランは長い間、核兵器開発を否定してきた。
2025年4月16日/イラン、首都テヘラン、アラグチ外相(右)と国際原子力機関のグロッシ事務局長(AP通信)

国際原子力機関(IAEA)は5月31日、イランが兵器級レベルに近い濃縮ウランの備蓄をさらに増やしていると明らかにした。

グロッシ(Rafael Mariano Grossi)事務局長は報告書の中で、イラン政府に対し、早急に方針を変更し、IAEAの査察団と調査を受け入れるよう求めた。

トランプ(Donald Trump)米大統領は今週、イタリア・ローマの在オマーン大使館で行われたイランとの核協議で成果が出たと強調。「重大な進展があった」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。

両国の代表団は先週、オマーン仲介のもと、5回目の間接協議を行った。

IAEAによると、イランは5月17日時点で、60%の濃縮ウランを408.6キログラム保有している。

IAEAは今年2月に公表した報告書でこの保有量を274.8キログラムと報告していた。

第1次トランプ政権は2018年、イラン核合意から一方的に離脱し、イランに厳しい経済制裁を科した。

イラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。24年末時点で60%の高濃縮ウランを200キログラム近く保有していた。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用

60%ウランは兵器級である90%レベルまで、技術的にはあと少しの距離にある。専門家によると、イランは90%ウランを濃縮できる技術を持っているという。

グロッシ氏は報告書の中で、「イランはこのレベルまで濃縮を行っている唯一の非核保有国である」強調した。

またグロッシ氏はイランに対し、「IAEAと全面的かつ効果的に協力するよう緊急に要請する」と述べた。

イランは長い間、核兵器開発を否定してきた。

トランプ氏は1期目を通じて実践してきたイランに対する厳しい経済制裁を再開する大統領令に署名。イランの主要収入源である石油産業を標的とする制裁措置が発動した。

イランは平和利用であることを理由にトランプ政権の要求を拒否し、制裁を解除するよう求めている。

トランプ氏は最初の任期中、厳しい制裁を科し、イランの石油輸出をほぼゼロに追いやった。イランはバイデン政権下で制裁逃れに成功、輸出量は増加した。トランプ氏はこれを再びゼロにするつもりでいる。

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