◎イラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。
11月5日、イランの原子力機関は濃縮度20%の高濃縮ウランの備蓄が210kgを超えたと発表した。
イラン政府は先日、2018年に停止したイラン核合意(包括的共同行動計画/JCPOA)の再開に向けた交渉に参加すると発表したばかりだった。交渉は11月29日にウィーンで再開する予定。
イラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用
今回の発表はイランの半国営メディアであるタスニム通信社とファールス通信社が最初に報じた。
イラン核合意は核開発の制限と引き換えにイランに経済的なインセンティブを約束し、核兵器の開発を防ぐことを目的としている。イラン政府は進行中のウラン濃縮は兵器ではなく民間のプロジェクトに利用すると主張している。
原子力機関のスポークスマンによると、当局はこれまでに濃縮度60%の高濃縮ウランを25kg生産したという。60%の高濃縮ウランを生産している国は核兵器の保有国だけと考えられている。
米国のドナルド・トランプ前大統領は2018年に合意から撤退したが、中国、ロシア、イギリス、フランス、ドイツは合意の維持に向けた努力を続けた。
ウラン濃縮を加速させるイランの戦略は、合意の再開を強く望んでいる欧州に対する圧力と見なされている。
イランの核プロジェクトを指揮するモハマド・エスラミ氏は今年9月、核合意に参加する5カ国が約束を果たさなかったため、国際原子力機関(IAEA)が核施設に設置した監視カメラを撤去したと発表した。
これに対し、米国のジョー・バイデン大統領と欧州の指導者たちは先週開催されたG20の中で、イランはウラン濃縮を加速させ、世界を挑発していると批判した。
核合意の再開に向けたウィーンでの交渉は今年6月に行き詰まった。
イランのエブラヒーム・ライシ大統領は交渉に厳しい姿勢で臨むと予想されている。ライシ大統領は最高指導者であるアヤトラ・アリ・ハメネイ氏の「傀儡」と見なされており、今年6月の就任演説で米国の制裁を解除するためにあらゆることをすると誓った。