◎投票率は過去最低を大幅に更新する48.8%だった。
6月19日、イランの大統領選挙は予想通り強硬派の司法長官、エブラヒーム・ライシ氏が圧勝した。
投票率は過去最低を大幅に更新する48.8%。2017年は70%を超えていた。
アヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の支援を受ける保守的なライシ氏は有効票の62%を確保し、他の候補者を圧倒した。
ライシ氏は1988年の政治犯大量虐殺への関与および、2019年の騒乱の中で抗議者を殺害した役人を免責したとされており、アメリカの制裁下に置かれている。
イランの政治システムは大統領を最高指導者の駒と見なしており、立法、行政、司法、軍、メディア、核計画、その他の全ての問題の最終決定権はハメネイ最高指導者に委ねられている。
60歳のライシ氏は若手の頃から高位の地位にあり、20歳の時にはカラジ市の主任検察官を務めていた。その後、2017年の大統領選挙でハッサン・ロウハニ大統領に敗れ、2019年に司法長官に就任した。
ライシ氏は選挙活動の中で、「私は腐敗と不平等と戦い、イランの経済問題を解決するのに最も適した人物」と自負していた。伝えられるところによると、ライシ氏はイランを支配するハメネイ最高指導者に非常に忠実で、第3代最高指導者に選ばれる可能性もあるという。
しかし、多くのイラン人と人権団体は、同氏が1988年の政治犯大量虐殺に関与したと指摘している。
アムネスティ・インターナショナルの報告によると、ライシ氏は首都テヘラン近郊の刑務所で約5,000人の囚人に死刑判決を言い渡したいわゆる「死刑委員会」の裁判官の1人だったという。アムネスティは、「男性と女性が埋葬された集団墓地の場所はイラン当局によって体系的に隠されている」と報告した。
アムネスティのアニエス・カラマール事務局長は19日、「エブラヒーム・ライシは殺人、強制失踪、拷問などの人道に反する罪で調査される代わりに大統領に就任した」と痛烈に皮肉った。
ライシ氏は死刑委員会に関与したことを否定してきたが、当時の政策については初代最高指導者のルーホッラー・ホメイニー氏の意思であり、正当化されると述べた。
多くの有権者や専門家は今回の選挙を出来レースと非難していた。
当初、40人の女性を含む約600人が選挙の候補者に登録されていた。しかし先月、候補者の資格を審査する監督者評議会が立候補を許可したのは男性7人だけだった。評議会はハメネイ最高指導者によって任命された12人の法学者と神学者で構成されている。立候補を許可された7人のうち3人は投票前に撤退した。
撤退した改革派のモーセン・メフルリザデ氏はテレビ討論会の中で、「最高指導者の部下たちは特定の人間を大統領にしたいと考えている」と述べた。「投票前から結果は決まっています...」
立候補を禁じられたマフムード・アフマディーネジャード前大統領は、「私はこの罪に関与したくない」と公の場で述べ、投票を棄権すると宣言した。
ライシ氏は勝利演説の中で、失業を緩和し、経済的困難に対処し、広範な不満を引き起こしたアメリカの経済制裁を撤廃すると約束した。
英BBCニュースは選挙結果について、「ライシ氏は保守的なイスラムの政治システムを強化し、社会活動を厳しく制限し、女性の自由と仕事を減らし、ソーシャルメディアとジャーナリズムを厳しく管理するだろう」と報じた。
ハメネイ最高指導者は19日の声明で投票率を称賛した。「選挙結果はイランの決意を反映しています。人々は経済問題やパンデミックの欲求不満を口にすることなく投票しました」
包括的共同行動計画(JCPOA/イラン核合意)の崩壊で経済制裁に直面したイランはウランの濃縮度を60%まで引き上げており、貯蔵量は先日6.5kgに達した。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用