イラン当局は、核科学者のモーセン・ファクリザデ氏を暗殺したテロリストに復讐すると誓った。
ファクリザデ氏は27日に首都テヘラン郊外で攻撃を受け、病院で死亡が確認された。
イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相は同氏の暗殺に「イスラエルの関連を疑わせる兆候が見られる」と示唆したが、詳細には触れなかった。なお、イスラエルはまだ声明を発表していない。
イスラエルは10年前にも数人のイランの核科学者を暗殺したと疑われている。かつてベンヤミン・ネタニヤフ首相はファクリザデ氏について言及しており、国民に「その名を覚えておくように」と述べた。
アメリカのドローン攻撃によるイランのカシム・ソレイマニ将軍暗殺から間もなく1年。今回の核科学者暗殺は、中東の緊張をさらに高める恐れがある。
2018年にイラン核合意から撤退したトランプ大統領はファクリザデ氏の暗殺について、イスラエルの諜報機関モサドの専門家であるヨッシ・メルマン氏の投稿をリツイートした。
メルマン氏はツイートで、「イランは心理的および専門的に大きな打撃を受けた」と述べた。
暗殺について
27日、イランの国防省は声明の中で次のように述べた。
「武装テロリストは、同省の研究革新組織の責任者、モーセン・ファクリザデ氏を乗せた車両を標的にした」
「テロリストとボディガードの衝突後、ファクリザデ氏は重傷を負い、急いで病院に運ばれた」
「残念ながら医療チームの努力は失敗し、病院到着数分前に彼は亡くなった」
ファールス通信社の報道によると、武装テロリストは車内からファクリザデ氏を乗せた車に発砲したという。
暗殺現場:ダマヴァンド郡アブサード
最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ氏の軍事顧問を務めるホセイン・デフガン氏は、雷のように加害者を攻撃すると誓約した。
イランのザリーフ外相は国際社会に、国家へのテロ行為を非難するよう求めた。
イランの国連大使、マジッド・タクト・ラヴァンキ氏は、「暗殺はこの地域に大混乱をもたらし、明らかな国際法違反である」と述べた。
イスラム革命防衛隊のフセイン・サラミ少将も、「現代科学へのアクセスを妨げる違反行為」とテロ攻撃を非難した。
一方、西側の諜報機関は、ファクリザデ氏がイランの核兵器計画に関わっていたと信じている。
イランの濃縮ウランは、原子力発電所と軍用核兵器に欠かすことのできない燃料である。
2015年、6つの大国(米、英、仏、中国、露、独)はイラン核合意でこの生産に制限を課したが、2018年のアメリカ撤退後、イランは協定の段階的履行停止を宣言した。
2021年1月にトランプ大統領の後を引き継ぐジョー・バイデン氏は、イラン核合意に復帰すると約束している。
米中央情報局(CIA)の元長官、ジョン・ブレナン氏はファクリザデ氏の暗殺について、この地域の紛争を煽る「犯罪的かつ非常に無謀な行為」と非難した。
ジョン・ブレナン氏:
「イランの指導者は、責任あるアメリカの大統領が世界の舞台に戻るのを待ち、犯人に対応したいという衝動を抑える方が賢明だろう」
「外国政府がファクリザデ氏の殺害を承認したのか、実行したのかは分からない。いずれにしても、国家支援テロリズムは重大な国際法違反であり、指令を出した政府はより厳しい制裁を受けることになるだろう」
モーセン・ファクリザデ氏について
・イランで最も有名な核科学者。
・エリートイスラム革命防衛隊の上級将校。
・イランの核開発計画において、非常に重要な役割を果たしていると言われてきた。
・2018年にイスラエルが入手した機密文書によると、核兵器の製造プログラムを主導していたという。
・ニューヨーク・タイムズ紙は、マンハッタン計画を指揮したロバート・オッペンハイマー氏とファクリザデ氏を比較している。
・1989年に設立された核爆弾を製造する秘密プログラム、「プロジェクト・アマド」を率いていたと言われている。