◎イランの原子力機構(AEOI)のスポークスマンは4月11日に施設の電力網に関連するテロ事件が発生したと述べたが、事件の詳細については説明せず、国際社会に「核テロ」に計画するよう呼びかけた。
4月11日、イランの原子力機構(AEOI)はナタンツ核施設で「テロ行為」が発生したと発表した。
AEOIのスポークスマンは11日午前に施設の電力網に関連するテロ事件が発生したと述べたが、事件の詳細については説明せず、国際社会に「核テロ」に計画するよう呼びかけた。
イスラエルのメディアは、施設で発生した「停電」はイスラエル当局のサイバー攻撃によるものと一斉に報じた。
イスラエル当局は施設の事件に関するコメントを発表していない。11日にロイド・オースティン米国防長官と会談したベンヤミン・ネタニヤフ首相は、アメリカのイラン核合意復帰を全力で阻止すると誓約している。
ナタンツ核施設では昨年、サイバー攻撃による火災が発生したと伝えられているが、イスラエルは事件への関与を否定している。
イランのハッサン・ロウハニ大統領は10日に開催された記念式典の演説の中で、「ウラン濃縮プログラムの鍵となる新しい遠心分離機を起動した」と述べていた。
遠心分離機は濃縮ウランを製造する際に使用する装置で、濃縮度90%以上の高濃縮ウランは核兵器の材料になる。
イランは今年1月にナタンツ核施設内の地下核プラント「フォード(Fordo)」で濃縮度20%の高濃縮ウランの製造を再開した。
イラン核合意(包括的共同行動計画:JCPOA)は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用
AEOIのスポークスマンはナタンツ核施設で発生した電力網に関連するテロ事件の詳細を説明しなかったが、イランのファーレス通信社は、「死傷者はおらず、燃料の漏えいもなかった」と報じた。
その後、イランの国営テレビは原子力庁のアリー・アクバル・サーレヒー長官の声明を発表した。「私たちはこの卑劣なテロ行為を非難します。イラン・イスラム共和国は国際社会と国際原子力機関(IAEA)と協力して、この核テロに対処すると誓約します。私たちは加害者に対して行動を起こすでしょう」
報道によると、IAEAは事件を認識しているが、「コメントすることはない」と述べたという。
一方、イスラエルの公共放送KANは、2010年にナタンツの遠心分離機を破壊するために使用されたと信じられているスタックスネット(Stuxnet)のようなコンピュータウイルスによるサイバー攻撃と推測した。スタックスネットはアメリカとイスラエルが開発したと考えられているが、詳細は不明。
ヤフーニュースウェブサイトの防衛アナリスト、ロン・ベン・イシャイ氏は、「イランは核兵器開発に向かって進んでいるため、今回の停電は意図的な妨害と考えるのが合理的だ」と述べた。「ネタニヤフ首相はアメリカのイラン核合意復帰を却下しており、交渉をストップさせたいのだろう」
ジョー・バイデン大統領はイラン核合意への復帰に向けた外交努力を加速させているが、ネタニヤフ首相は先週、合意への復帰はあり得ないと警告したうえで、「イスラエルは合意に一切拘束されない」と宣言した。
ネタニヤフ首相は11日に開催されたイベントの中でイスラエルの歴史について語り、祝杯を挙げたと伝えられている。イベントにはモサドの首長ヨッシ・コーエン氏らも参加していた。「イスラエルは弱者から世界を代表する大国になりました...」
汚職裁判に直面しているネタニヤフ首相は、先月の議会選挙で過半数獲得に失敗した。