◎エブラヒーム・ライシ大統領はイランの全権を握るアヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の弟子であり、穏健派と見なされていたハッサン・ロウハニ前大統領より強硬な姿勢を取ると期待されている。
8月5日、イランのエブラヒーム・ライシ氏は首都テヘランの議会議事堂で大統領に就任すると誓った。
ライシ大統領はイランの全権を握るアヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の弟子であり、穏健派と見なされていたハッサン・ロウハニ前大統領より強硬な姿勢を取ると期待されている。
ライシ大統領は就任演説の中で、「(アメリカの)制裁は解除されなければならない」と語った。「私たちはこの目標を達成するためのあらゆる外交計画を支持します」
ライシ大統領はアメリカの制裁を解除し、隣国サウジアラビアとの関係を修復するための外交を展開すると強調した。「私たちは世界、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、イエメン、シリア、パレスチナ、抑圧と犯罪が発生しているすべての国で活動している人々を支持します...」
イランはサウジアラビアと激しく敵対しているイエメンのイスラム過激派組織フーシ派のジハード民兵や、レバノンのイスラム原理主義組織ヒズボラなどに兵器を提供している。
イラン史上最低の投票率を記録した6月の大統領選で圧勝した元司法長官のライシ大統領は、「最高レベルの敵対行為、不当な経済制裁、広範な心理戦、コロナウイルスのパンデミックに勝利する」と誓い、喝采を浴びた。
アメリカの厳しい経済制裁に直面しているイランは現在、インフレ、収入の減少、計画停電、水不足、抗議活動、コロナウイルスの感染拡大などに悩まされている。イランは最大の収入源である石油の海外への販売を禁じられている。
2018年、当時のドナルド・トランプ大統領は包括的共同行動計画(JCPOA/イラン核合意)から一方的に撤退し、イランに厳しい経済制裁を科した。それ以来、両国の関係は緊張したままである。
一方、オマーン沖を航行していたイスラエルの企業が運航する石油タンカーのマーサ・ストリート号は先週、何者かのドローン攻撃を受け、乗組員2人が死亡した。事件後、アメリカ、イギリス、そしてイスラエルは「ドローン攻撃の実行犯はイラン」と名指しし、厳しく非難した。
ライシ大統領はアメリカとの関わりを約束したが、核・ミサイル開発の制限や、ジハード民兵への支援を交渉の材料に含めることはないと強調した。ジョー・バイデン大統領はイランの核開発だけでなく、イエメンのフーシ派の活動を抑え、餓死の危機に直面している数百万のイエメン人とその子供たちを救うと約束している。
ライシ大統領は医薬品の深刻な不足をアメリカの制裁の影響と非難し、団結してコロナウイルスに立ち向かわなければならないと述べた。
イランの感染状況は極めて深刻で、新規症例は3日連続で過去最高を更新し、死亡者も増加傾向にある。また、深刻な水不足と不況に抗議する集会が南西部地域で頻発し、治安当局は対処に追われた。
多くのイラン人は6月の大統領選を「出来レース」と呼び、ボイコットした。ハメネイ最高指導者はロウハニ前大統領に近い候補者を含む数百人を選挙から追放し、立候補を許可された7人のうち3人は投票前に棄権した。首都テヘランの投票率は34%だった。
元司法長官のライシ大統領は1988年の「死刑委員会(裁判)」に深く関与した高官のひとりであり、厳しく非難されている。同委員会はサダム・フセインの支援を受けたイランの武装グループ「ムジャヒディン・ハルク」のメンバーならびに関与した者を少なくとも5,000人処刑したと伝えられている。
アメリカは2019年、人権侵害の疑いで当時のライシ司法長官に制裁を科した。