◎イランの議会は核科学者モーセン・ファクリザデ氏の暗殺後、高濃縮ウランの生産を許可する新法を可決した。
◎イラン核合意(JCPOA)は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。
EPA/イラン、ハッサン・ロウハニ大統領

1月4日、国際原子力機関(IAEA)によると、イランは地下核プラント「フォード(Fordo)」で濃縮度20%の高濃縮ウランの生産を再開したという。

これは2015年のイラン核合意(包括的共同行動計画:JCPOA)に違反する行為である。

高濃縮ウラン(濃縮度20%以上)は原子炉の燃料だけでなく核兵器に転用可能。兵器級は90%以上まで濃縮度を高める必要がある。なお、20%未満のものは低濃縮ウランと呼ばれている。

JCPCOは3.67%以上のウラン濃縮を禁止している

<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用

イラン国営テレビは、ハッサン・ロウハニ大統領がフォードでの作業再開を指示したと報じた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は声明の中で、「イランは軍事核計画を実現させるために行動を開始した。イスラエルはイランの核兵器製造を許可しないだろう」と述べ、ロウハニ大統領を非難した。

EUの報道官、ピーター・スタノ氏はイランの動きについて、「核不拡散に深刻な影響を与える。JCPOAに基づくイランの核コミットメントから大きく逸脱する危険な行為だ」と述べた。

ロイター通信/イランの議会は、モーセン・ファクリザデ氏暗殺後、高濃縮ウランの生成を認める法律を可決した

同日、アラブ首長国連邦(UAE)はイランがホルムズ海峡で韓国籍の石油タンカーを押収したと発表した。

イラン当局はタンカーの押収を認めたうえで、「現在ソウルで凍結されている数十億ドルの資産を解放するための交渉は、数日中に再開すると期待されている」と述べた。

韓国の外務省はタンカーの即時解放を要求し、ホルムズ海峡に駐留している海賊対策部隊を地域に派遣したと発表した。

アメリカの主要メディアは、二重の緊張は1月20日に就任するジョー・バイデン新大統領への圧力と報じている。

2019年5月8日 Getty Images/イランに圧力をかけるUSSエイブラハムリンカーンとUSNSアークティック

ロウハニ大統領のスポークスマンは、少なくとも年間120kgの高濃縮ウランの生産と貯蔵を「義務付ける新法」に従い、作業を開始したと述べた。

イランの議会は核科学者モーセン・ファクリザデ氏の暗殺後、高濃縮ウランの生産を許可する新法を可決した。

IAEAは声明で、「イランは最大4.1%のU-235の濃縮を20%に高め、フォード燃料濃縮プラントへの供給を開始した」と述べた。

JCPCOは3.67%以上のウラン濃縮を禁止したが、トランプ大統領は「この措置には大きな欠陥がある」と主張し、合意から脱退したうえで制裁に踏み切った。

一方、1月20日に就任するバイデン新大統領は、「イランがJCPCOを完全に順守し、さらなる交渉を約束する」のであれば、合意への再参加を検討すると公の場で述べている。

しかし、今回のイランの動きは、アメリカのJCPCO復帰を妨げる可能性がある。

軍備管理協会の専門家はBBCニュースの取材に対し、「20%の高濃縮ウラン120kgを兵器用に濃縮すると、1つの核兵器に必要なウランの約半分を生産できる。また、0.7%から20%に濃縮する過程がウラン濃縮の総労力の9割を占めるため、ロウハニ大統領の指示は核兵器開発の脅威を高める」と警告した。

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